青年

 僕は来年の夏から撮影が始まる映画の俳優オーディションに来ていた。

「次の人どうぞ。」

 やや低めの声が聞こえ僕は部屋に入った。

「では今回のこの作品にどのように挑みたいか教えて下さい。」

 呆気を取られた。

 この前受けたオーディションでは自己紹介から長所、短所など面接的順番で質問されたのに、初めてであった。

 でもそれが逆にこの作品に対する本気度なんだとも思えた。

「僕は、自分自身にこれといったものがあるとは思っていません。

 しかし、だからこそ役に入り込み自分自身が役自身になると思います。」

 少し強気に出たのであった。

「わかりました。ありがとうございます。

 オーディションは以上です。」

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