第2話プロローグ2

 結局、いまは科学の時代になった。魔術なんて曖昧なものにほとんどの人が頼らなくなった。

 かつて戦場で、ヒーローのようにもてはやされた魔術師は、優秀な化学兵器の登場でそこらの雑兵一人と何も変わらなくなった。

 いくら最強の魔術師を用意したところで、分厚い装甲の戦車に風穴は開けられないし、戦艦の弾幕に返り討ちにあうだけだし、マッハ3で飛ぶ戦闘機に至っては攻撃をかすらせることすらできないだろう。

 最近では、大陸間弾道ミサイルなんいていう数千キロメートル離れた場所からボタンひとつで目標を蒸発させる兵器まで出てきたらしいので、いよいよ戦うことを生業にしてきた魔術師たちは廃業かもしれない。

 それぐらい、ここ300年足らずで科学という技術は凄まじい発展したのだ。

 もし数百年以上前なら、呪文ひとつで火を起こせる魔術は便利だっただろう。火打ち石や着火剤を用意せずとも良いのだから。適当な薪に着火させて、あとは維持するために薪を足していけばいいだけだ。

 でも、今はどうだろうか?ガスコンロのツマミをひねれば、勝手に火が付いてくれる上に、薪を足して維持する必要すらない。なら、わざわざ自分の体力でも魔力を消費してわざわざ魔術を使う必要はない。

 そこまでするなら、みんな家電量販店に行って、科学技術によって作られた製品を買って使うのが当然だろう。

 普通の人ならそうするはずだ。

 だが、それはあくまでごく普通の一般論に過ぎない。

 一般論が存在するということは、普通とは変わったことを考えている人がいるということだ。

 魔術で起こした火を使って淹れたコーヒーが美味いとか、魔術を使って灯したろうそくの明かりが綺麗だとかいう人間が。

 世の中に一定以上はいるそんな変わり者たち。

 しかも、それを国家単位で主張したとある国があった。

 ヨーロッパの辺境の地にある『リーヴルタニア王国』という小さな国だ。

 かつて多くの魔術師を輩出したその国は、科学が黄金のように輝くこの時代に、今はくすんでしまった魔術も同じぐらいまた輝けると信じていた。

 世界各国の「魔術に魅せられた」変わり者たちは、その国へと流れていった。

 そんな一見普通とは違った考えを持った若者たちが世界中から集まる学園がここ、リーヴルタニア王立魔導学園だ。

 文字どおり、魔術を学ぶために国が設立した学園だ。

 国土の約3%を使って作られたその学園には、初等部、中等部だけで五千人もの生徒を抱え、さらに高校にもなれば一学年だけで何千人単位にもなる超マンモス校だ。

 最近では、魔術の需要が減っているため、魔術科だけでは学園も維持が厳しくなったため普通科も設立されたものの、それでも魔術の名門として変わらずその名を知らしめる学園である。

 そして、一人の少女もまた、人類がもう忘れかけていた魔術を学ぼうという、その変わり者の中の一人だった。

 

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