第56話 家に帰るまでが冒険です。
スペルドは一命を取り留めミニャに連行されることになった。
俺は止めを刺そうかと思ったが、フィロが止めたのでそれ以上何も言わなかった。
実質リムリを誘拐したのはブタであり、その始末は終わった。
フーカの件もフーカ自身がスペルドを倒すことで決着は付いている。あとはフィロの仇だが、フィロがいいと言うのであれば俺が動くことは出来ない。
「安心するにゃ。ちゃんと罪は償わせるにゃ。こいつもそれなりの実力者にゃから、ダンジョンでこき使うにゃ!」
まぁ後のことはミニャに任せるとしよう。あぁ、もちろん神具は回収済みだ。伸縮の剣と盟約の指輪は現在俺のアイテムボックスに収納している。
ミニャ達は眼前にある大穴や、フィロの超回復については追求しないでくれた。むしろ「これどうするよ」っと、後処理に頭を悩ませているようだ。ご愁傷様です。
「私も治してもらった以上、口外はしないわ。ルナ様の件も秘密にするから安心して」
「フィロには世話になりっぱなしだな。この借りはいずれな」
「ええ。当てにしてるわ。早く偉くなってよね」
俺を偉くして何をさせるつもりなんだ? まぁ、大抵のことはしてやるけどさ。
それから後処理を行うミニャやフィロ達と別れ俺達は大岩の所まで戻り、ようやくひと息つくことができた。
「ふー、終わったな。ダンジョンからこっち急展開で疲れた。……ん? そういえば俺全然働いてないな」
ダンジョンボスはフーカが倒したし、そのあと街に帰ってフィロを治療したのはルナだし、傭兵倒したのもルナだ。スペルドを倒したのがフーカで、俺はブタを処理しただけだな。
「ルナの力はジンのモノだし、ルナの功績もジンのものよ」
「私のもです!!」
「つまり私を助けてくれたのはご主人様ってことです!」
そう言ってくれるのは嬉しいんだけど。
「暑い」
「フーカ、リムリ、ジンが暑がってるわよ。離れなさい」
「リムリンが離れたら離れます」
「フーちゃんとルナっちが離れたら私が独占できますね」
俺の右腕にフーカが、左腕にリムリが抱きつき、ルナは俺の首に手を回して背中から抱きついていた。
「いいから全員離れろ。はぁ、ここで休んでもしょうがないから転移で家に戻るか。ルナ、近くに人の気配はあるか?」
「ないわよ。ミニャ達からも見えないから大丈夫でしょう」
しぶしぶ離れていたフーカ達がそれを聞いて再び抱きついてきた。
「転移するなら触れていないとですね!」
「抱きついて欲しいならそう言えばいいのに」
確かに転移する時は一緒に連れて行く人物にも触れていないといけないが、こんなに密着する必要はないからな。
あと離れられて寂しかったから転移するわけじゃないぞ。
………………ちょっと勿体無かったかなって思っただけだぞ。
「ルナは離れないからね」
「はいはい」
フーカ達が一度離れた時もルナは抱きついたままだった。ルナは羽のように軽いし、いつも肩に乗ってるから居ないとそれはそれで落ち着かなくなるんだよな。……本人には言わないけど。
「ふふふふふ、これが真のパートナーの実力よ」
「ぬぬぬ、負けません!」
「ルナっちは卑怯だぁ! あ、私は肩車でも大丈夫ですよ!」
俺の心の声は筒抜けなのだろうか。……リムリよ。ルナは他人には見えないからいいのであって、流石に肩車をして街中を歩くのは恥ずかしいと思うぞ?
「――フーカも肩車して欲しいのか?」
「ふぇ! え、その、じ、ジン様がしたいのであれば、いつでも覚悟はできています!!」
肩車には覚悟が必要なんだな。――まぁ、羞恥を耐える覚悟が必要か。でも、フーカぐらいならまだ可愛いで通りそうだが。兄さんに肩車をねだる妹、いいね!
「ジン様? 失礼なこと考えていませんか?」
「いえ、別に」
「それじゃ誰からするのかしら? ルナは最後でいいわよ」
あれ? これって全員を肩車する流れですか? 転移はどこいった?
それからリムリ、フーカ、ルナの順番で肩車をすることになった。
と言っても、軽くその場で回ったり飛んだりしただけだが、
「きゃはは! すごいスゴイ! あはははは!!」
リムリは大はしゃぎで喜んでいて、
「うぅぅぅぅ。はしたない真似をしてしまいましたぁ」
フーカは顔を真っ赤にして手で顔を隠しており、
「これは肩車とは違うと思うの」
ルナは身長が足りないので後頭部に抱きついている様な状態だった。まぁそれはそれで本人は喜んでいたが。
「それじゃ家に転移していいか?」
一通り肩車が終わりご満悦な娘達に声を掛けると先ほどと同様にギュッと抱きついてきた。
「はぁ、それじゃ行くぞ? ――転移!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます