異世界ダンジョン制覇 ~目指せ楽園ハーレム~

夜桜 蒼

序章 ~始まりの日~

第1話 プロローグ



「やっと学園生活も終わるな。長かった、本当に長かった」


学園生活もあと僅かに迫った肌寒い秋の夕暮れだった。

俺、九条仁は学園帰りに一人近くの川辺にやって来て黄昏いた。

特に仲の良い友達もおらず、休み時間はいつも一人の俺には学園生活は辛く長いものだ。

それなりの進学校として有名な学園だったが、イジメはどこにでもあるもんだ。イジメられていたヤツを助けたら今度は俺が標的になってしまった。


子供の頃から空手や剣道なんかをやっていたから腕力で負けることはなかったが、五人に囲まれ返り討ちにしたら俺が暴力を振るったことにされていた。

理不尽だ、と教員達に訴えたがまるで相手にしてくれず、周りの連中は俺が乱暴者だと言う始末。学園を辞めようと思ったが成績が良かった俺の為に親が無理して入れてくれた学園なので、簡単には辞めれない。最も両親は交通事故に合い他界することになったのだが、周りの連中はそれも俺が暴れている理由だと思っているようだ。


俺から手を出すことは一切ないが、それでも一度ついた汚名は消えず街中で不良に絡まれることもしばしば、全勝しているからか俺が喧嘩を売っていることになっているようだ。理不尽だ。

お陰さまで成績は下がるし、素行が悪いと噂されているから推薦も無理だ。――行く気もないが。

ただ俺が居るせいか、学園内でのイジメは完全に無くなっているようだ。いい事なんだろうけど、複雑だよ。


今は叔父の紹介でアパートに一人暮らしだ。金は両親が残してくれているから問題はない。せっかく進学校に入ったが、卒業したら働くことになるだろう。

だけど後悔はない。俺は間違ったことはしていない。誰かの為に何かをしなくては、何てカッコイイことを言うつもりはないが、それでも俺が助けたイジメられっ子は感謝してくれたのだ。今では生徒会長だ。立派になったものだ。


「あ、あんた! あんたが、く、九条ねッ?」


この辺りで俺に話しかけてくるやつにロクなやつはいねぇよな。

嫌な予感を感じながら振り返ると手に何かを持って震えている女がいた。

年齢は同じくらいか? 見るからに頭の悪そうな女だ。声が震えているけどヤバい薬キメてんじゃねぇだろうな。


「……そうだが、アンタ誰だ?」

「く、九条ッ!!」

「な――ちょ、っく!」


俺の返答に応えるかのように女は手にした包丁を構えて突進して来た。

咄嗟に躱そうとしたが足場が悪く、初動が遅れたので躱すのは諦め迎撃に変更する――が、流石に女を殴るのはダメだろうっと拳が止まったせいで包丁はすぐ傍にまで迫っていた。


「ああぁぁあああ!!」


女の叫びを無視して手首を掴むが女はそのままタックルするようにぶつかって来た。押さえ込もうとしたけど足場が悪かったのが災いして女共々土手を転がり川辺に落ちてしまった。


「がは! あぁ、くっそイッテェ」


川辺に頭から落ち岩に頭をぶつけたせいで頭がふらつく。女は落ちる寸前に横に投げたので包丁が刺さることはなかったが、これはちょっとヤバイかも知れない。


「あの女は? ッぐ、があぁぁ、てめぇぇぇ」


背中に衝撃があり、激痛が体中を走った。

振り返ると女が俺の背後から包丁を腰の辺りにぶっ刺していた。


「ひ、ひっひ! や、やった! やったわ! これで私はジュン君と! はっは、やったわ、はっははは」

女は震えながら後ろに下がり、狂ったように笑っていた。

俺は激痛に立っていられず、川に倒れ込んだ。水が体を通り血がどんどん流れて行く。

くそ、もう体が動かねぇ。動けよおい! ちょっと内蔵に切り込み入っただけだろうが! ……くそ、死ぬのか。こんなバカ女のせいで。ジュン君って誰だよ! 大方俺が返り討ちにした不良の一人だろうけど。


……意識が遠のく。どうせ一人だ。悲しむ人もいない、親戚にも暴れん坊って思われてるしな。あ、両親の遺産が親戚に渡るのは嫌だな。岩に遺書を書く暇ないかな。――もうダメか。くそ、この女のせいで、生まれ変わったらお前を殴りに行く。過去に戻れるなら拳を止めずに振り抜く。人生をやり直せるなら女にも容赦しないナイスガイになる。そう女なんか――。



「女なんか糞くらえだぁぁぁ!!!」



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