第1話

「んん~っっっ今日は最高の天気ね!」


 ここ天界都市ベルンはここ数日間にわたる曇天が嘘だったかのように太陽はさんさんと照りつけ、心地よい春風も吹き付けている。

 久しぶりの晴天からか街の中央に真っすぐと伸びているベルン商店街はたくさんの人にあふれ、お店は水を得た魚の様に活気だっていた。


え?お前誰だよって?

まあそうだなぁ、神様みたいなもんだと思っててよ。あ、冒頭のセリフはぼくんじゃないから、ぼくは男の子だから「~ね!」とか言わないからね!


え?一人芝居はいいから引っ込んでろって?

まあまあ、そう焦らない。じゃあお礼にこの町の説明をしとこうかな。

お前が言いたいだけだろ、とか言わないでね!


 ここベルンは天界では地方都市、いや田舎?ぐらいの扱いだから、ここにあるのは領主様が住んでる小さなお城と少しばかり大きな協会と時計台。あとは天界では有名な昔話の発祥地であること。

 古くに天界を統一した勇者様の出身地だとか何とか。

 でも所詮は説話、ベルンをわざわざ訪ねる人はそういない。


 しかし、そんなベルンも今日はなんだか騒がしい。これは単に商店街が活気だっているからだけではない。

 それもこれも三か月前に遡る。


 ベルンのなんてことない市街地の路地。

 そんな場所に突如、玄関からそのまま取り外してきたような木製のドアが現れた。

 それも道のど真ん中に。

 ドアを開いてみてもモザイクがかかったようでドアの先は見えない。

 また、ドアに腕を突っ込んでもドアの反対側から手が出てくることはなかった。


 この騒ぎは瞬く間に天界の首都ルーテルベルクに伝わった。

 多くの民衆はただの噂話だと思ったそうな。

 しかし、ルーテルベルクに住む王族は知っている、ベルンに古くから伝わる伝説のことを。


 この伝説は昔話の中に書いてあるものだが、詳しい内容は王族しか知らない。

 その伝説とは勇者が天界を救うきっかけとなった禍に関係する。


禍をもたらしたのはたった一つのドアだった。このドアはベルンにずっと昔から封印されていたらしい。

このドアを不本意にもとある学者が解いてしまい、このドアにつながっていた闇の国から闇の軍勢がわんさか天界に攻め入ってきたという。


 何度も言うが、こんなもん所詮は伝説だ。

 しかし、「伝説」と呼ばれた方がどこか人の恐怖心を煽るものだ。

 王族たちは表面上はどこぞの地で起きた造作もない出来事、ぐらいの顔をしていたが内心とても焦っていた。

 

 そして2か月後、国はついに動いた。

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