とてとてた
福倉 真世
第1話 とてとて た
とてとて た
君の足音が聞こえる
肉球がそっと、畳を押す
とてとて た
居なくなってしまったなんて
嘘だろ?
まだ君の毛がぶらしに残ってる
玩具も転がってる
大好きだった寝床には君の、人からしたら
少し獣くさい香りも
とてとて た
最初から分かっていたことだろうと
言う人もいるだろう
そう知ってはいたんだ
君が僕の何十倍も早く年をとること
とてとて た
面倒くさいことだっていっぱいあった
家具や持ちものをいくつ台無しにされたことか
でも、そんなのは良い
いくらだって良いから
とてとて た
優しい足音が聞こえる
誰よりも優しい足音
と
大好きだった
て
一瞬にいるだけで
と
僕に何が出来たろう
て
良い飼い主だったかな
た
あともう少しだけ
せめてもう少しだけ
君がここにいる。
そう思わせてはくれないか。
とてとて た
小さな後ろ姿が遠ざかる
世界で一番愛しい光景
逝かないで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます