勝利だギューちゃん

第1話

「やあ、元気?」


クラスメイト(だった)の女の子が、目の前にいた。


おかしい・・・これは夢か・・・幻か・・・

この女の子は、先月事故で、他界した・・・


「あ・・・確か・・・」

「おっと、そこから先はなし、名前で呼び合うのは止めよ・・・」

「どうして?」

「だって、君は私の名前を、一度も呼んだことがないでしょ?」

「うん」

「だから、私も君の名前を、呼ばない・・・」

不思議な事がある。


「君は、幽霊?」

「まあ、世間一般にはそう言うわね」

「で、どうして僕の前に?」

「怖がらないの?」

「うん」

「どうして?」

「霊よりも、生きている人間の方が、怖い・・・」

確かにそうだ・・・生きている人間の方が怖い・・・

霊の方が、まだ安心・・・


「で、どうして僕に会いに来たの・・・」

「君にだけは、伝えておきたいことがあって・・・」

「伝えたいこと?」

「私は、君の事が好きだった?」

「嘘!」

「違う、本当よ・・・但し・・・」

「但し?」

「男の子としてではなく、人間として好きだったの・・・」

不思議だった・・・男としてはもちろん、人間として好かれる要素なんて・・・


「君は、私がないものを持っていたの?」

「ないもの?」

「出来る事なら、それを買いたかった・・・」

「それは何?」

「わからない・・・」

「・・・うん・・・」

「そっか・・・普通は自分ではわからないよね・・・」

彼女は、ため息をついた・・・


「私は君と、一度でいいので、デートしたかった?」

「デート?」

「そうすれば、少しは得られるかもしれない・・・でも・・・」

「でも・・・」

「君は一度も、デートに誘ってくれなかった・・・」

「身の程は、わきまえてる」

そうだ、僕はそんなに、身の程知らずではない・・・


「教えてほしい?君にしかなかったもの?」

「・・・うん・・・」

「純粋さ・・・そして、素朴さ・・・」

「それって、誰でも・・・」

「いいえ、私には、いえ、周りの人間はみんな、持っていなかった」

「別になくても・・・」

「人はいついしか大人になる。その為には、純粋さや素朴さを捨てて行く」

「捨てていく?」

確かに、それが大人になることかもしれない。でも僕は・・・


「でも、私は私だった・・・君も君だった・・・」

「嫌味?」

「ううん。私は君の心の白さが好きだった。私はもう、染まっていたから・・・」

大きくなるにつれて、人は染まっていく・・・

でもそれは、他人の影響が大きい・・・


「だから、君は自分の力で、自分色の染まって!君なら出来る信じてる・・・」

「お別れなの?」

「うん・・・でも、永遠ではないわ」

「どういうこと?」

「だって、向こうでいつか、会えるでしょ?」

「・・・うん・・・」

彼女の言葉に頷いた・・・


「じぁあね」

彼女は消えた・・・


「難しい宿題を、残して行ったな・・・」

彼女を恨んだ・・・

但し、敬愛の意味で・・・

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勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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