12話 情報収集と言う名の娯楽 その1
中条が去って静かになったが、3人はまだ貰った紙を眺めている。覚悟はしておけよと言っておいたはずだが、実際現実となると複雑な気持ちだろう。
ちらっと左を見る、夜巳は大人しくしている。中身が人生経験豊富なのだから、この部分は評価できるな。
「ところで、夜巳はどうやって転生したんだ? 万が一の時の為に知っておきたい」
「転生なんて、誰でもしてますよ? 普通の人は、転生前の記憶が読めないだけです。
方法は、魂に刻まれた記録回路を脳に繋ぐだけです、どうやってやるかは、秘密です。
と言うか、ダーリンは死なないので、必要ないでしょう?」
「秘密と言われると、知りたくなる」
「教えると、私の転生の邪魔するから、教えません」
たしかに邪魔したくなるな、付きまとわれる心配もなくなるし。
夜巳は、子供の小さな口で朝食を再開した。すでに瑠偉達の食事は終わっている。ならば、討伐に出かけるか、障害は早めに排除するに限る。
「出かけるぞ、麻衣。今から討伐に行こうと思うのだが?」
「ダーリン、アフリカは現在深夜1時ぐらいですよ? 明るくなってから行った方がいいと思います」
「そう言う事は先に言えよ! やる気が萎えるわ」
「普通は時差を考えるでしょう、馬鹿なの?」
「ですよねー」
よし、いつもの瑠偉だな、そしてイラつく俺もいつも通りだ。
そして便乗している麻衣は、夜にお仕置だ。
「となると、時間が余るな。夜明けまで6時間ぐらいか、それまで何をするか?」
「はーい、漫画喫茶行こうよ。連載漫画の続きが、気になりまーす」
「そうですね、最近の情報を、知っておきたいですね」
「私は、街の景色を確かめ、地球の空気を感じながら走りたいな」
一人だけ別行動なのか。せっかく地球に戻ってきたのに、すぐにトレーニングとか、美憂さんはいつも通り、自身の行動に迷いが無いな。普通は全員一緒に行こう、となるはずだが。
「美憂、せめて一緒に行動しようぜ。筋トレとか毎日しているだろ?」
「そ、そうだな。すまん」
「私は、お留守番してます。少し休みたいですからね。一晩中天井に、固定されていたので、全身が痛いんです。それに
最大の問題は、ここ戻ってくる時に、置き去りにされる心配があります」
さすが自称嫁、俺の性格がよくわかってるな。いや、さすがに身寄りのない子を、置き去りにするほど、病んではいないが。
「よし夜巳、お勧めの漫画喫茶の場所を教えろ」
「では、抱きしめてキスをしてください」
夜巳は椅子から降り、俺の方を向き目を閉じた。さらに頭をすこし上げ、口を尖らせると「むむむむ」と低くて怪しい声が、小さな口から漏れていた。
お子様にキスはしないから、当然放置だ・・・
「・・・中条の所に行くか、この時代の金もないしな。
その前にララは、服を変更できないか? その体にピッタリくっついた服は、男子の視線を集めすぎる」
『ナノマシンで覆っておりますので、いつでも変更が可能です』
「ふむ・・・」そのまま女性陣を見渡す、瑠偉と美憂の服は、胸の部分が問題だ。そうなると、麻衣の服が一番無難だろう「よし、麻衣の服と同じに変更できるか?」
『可能です、変更します』
その言葉と同時に、ララの覆っていた服が、一瞬にして細かい粉状になり、体を回り始めた。その状態のララは、当然全裸であった。しかしと言うか、やっぱりマネキンの姿だった。
細かい粉状の物は、徐々にララの体に張り付き、服を形成していく。まずショーツと、ブラジャーが形成され、その上にスカートと上着が形成され完成した。
『装着、完了しました』
見事に麻衣と同じ服が、ララの体に再現された。きちんと身長差も考慮さている。
しかし、下着が麻衣と同じ柄と、装飾だったのが気になるが・・・
俺の左袖が、強く引かれる感じがした。見ると麻衣が、鼻息を荒くして興奮していた。
「欲しい、あの服欲しいよー! ちょうだいよー」
「ララ、そのナノマシンの服は、生身の人間に実装可能か?」
『可能です』
「よしマスター命令だ、絶対に麻衣には実装はさせるな」
『麻衣様に拒否、了解しました』
麻衣は俺の腕から離れ、後ずさりを始めた「ま、まさか兼次ちゃん・・・」
「察しがいいな麻衣、対価を求める!」
胸を載せた腕組で、目を閉じ唸りながら麻衣は考え始めた「やっぱり、そうきたか……んん~うぐぐぐ・・・よっし」と左手をスカートのポケットに入れ、何かを握って出そうした。
俺はそれを見て、素早く言い渡した「25円は却下だ!」
「はうぅ…兼次ちゃん意外と覚えているのね・・・」
「お前ら、俺の事バカにしすぎだろ」
「バカの事をやってないで、アレが目覚める前に行きましょう」
そう割り込んできた瑠偉は、夜巳をアレと言いながら、指で刺している。
夜巳を見ると、まだ目を閉じて口をとがらせていた。
「よしくぞ」と手のひらを前に出す、ララを含め全員が俺の手に触れる。昨日行った付近を、探知したが、中条はそこから動いていないようだ。素早く中条の詳細な位置を特定し、全員を力で包んで、テレポートで部屋を後にした。
……
…
俺達が現れた部屋は、およそ20畳くらいだろう。部屋の中央に、対面のソファー、テーブルがある。周辺には、骨董品と思われる壺や皿が置かれ、壁には絵画が飾られている。窓際を見ると、大型の事務机が置かれていた。その事務机に、中条が座ってこちらを見ていた。
「何か用かの?」
「アフリカは深夜だ、明るくなってから行く。そこで、ちょっと遊びに行こうと思ってな。
金が無いから、お小遣いをくれ」
「ぬしは子供か…」
「46年前のお金なら持っているのだが? 仕方ない銀行の金庫から・・・」
俺は途中で発言をやめ、ちらちら中条の様子をうかがう。中条は机の引き出しを開け、財布を取り出た。
「わかったから派手な行動はよせ、両替してやろう幾らだ?」
「80万だ」
「っな、はち・・・すまんが手持ちがない、10万円分にしてくれ。
残りは銀行が開いたら、そこで交換してくれ」
俺は中条が座っている場所まで移動し、10万円を渡した。札を受け取り確認すと、そこには諭吉さんではなく、アゴ髭を伸ばした老人が描かれていた。人物像の周辺模様は、昔のデザインに似ているが、文字が五千円になっていた。数えると枚数が20枚あった。
「ちなみにこの札の人物は? あと五千円札が多くないか?」
中条の顔を改めて見ると、札の人物像に似ている・・・まさか?
「それは儂じゃ、かっこいいじゃろ? ちなみに壱万円札は廃止しておる、
高額紙幣は偽札の餌食になるからのう」
「そ、そうか・・・これから漫画喫茶に行きたいのだが、何処かないか?」
「なんじゃその微妙な顔は・・・まぁよい、漫画喫茶は、このビルを出て左に曲がって100メートルほど先にある。近くに銀行もあるから行くとよい」
「わかった、例のアレを倒したらまた来る」
そのまま女性陣を従え、部屋を出ると扉の外に女性が立っていた。
「1階の出口までご案内いたします」
「そうか・・・頼む」
なんだろう、素晴らしく準備がいいな・・・
『マスターご安心ください、前もって中条さんに告知しております』
「そ、そうか・・・」
そうかララが先に連絡しておいてくれたのか、深く考えたくはないが、某映画みたいなことにならないよな?
『心配無用です、私はいつでもマスターの味方です』
「うむ、頼んだぞ」
と言ったものの、少し心配だ。心読んでるし・・・
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