5話 戦いの前夜 その1


 円形テーブルを囲う10人の男女、テナの話を聞き終えてから全員が黙り込んだ、誰かが話し始めるのを待っているようだ。


 地球より数万年進でいた、科学力を誇ったテナの故郷ですら対応できずに絶滅した。しかし、地球には俺が居る、中条達ではどうにか出来なかったようだが、俺ならなんとかできる、は…ず……だ?


 まぁ、大口たたいて<出来ませんでした>じゃ恰好悪いから、大きく宣言はしない。


「バーーーン」と大きな音が突然部屋中に響き渡った、オデコにコブを付けた夜巳が、テーブルを両手で叩き会議に割り込んできた。


「心配は及びません、アレは居なくなります。見えましたから! ダーリンなら勝てる! と言う事です、これは確定事項ですよ!」

「誰がダーリンだよ、子供は早く家に帰って寝てろ」


「ひ、ひどい・・・あんなに愛し合った仲なのに、男は時間と共に愛が薄れてしまうのね・・・

 でも、私はめげない! きっとつかんで見せる!」


 夜巳は溜息と共に力を無くし床に座り込む、両手を床につけ四つん這い状態になる、聞こえない音量で床に向かって話し始めた。面倒だから放置しておこう、子供に興味は無いからな。


「お前らの言う<死の流動体>に付いてだが、俺が何とかしてやろう」そう言いながらテーブルに座る中条達を見渡す、最後に中条を見ながら注文を付けた。「ただし条件がある!」


「儂らに出来る事なら、出来る限り協力しよう。

 正直我々ではどうにもできなかったのでな」


「よろしい、ではシナリオを言い渡す。


 まず<死の流動体>は俺が処理する、ただし俺が倒したということは伏せてほしい。有名になると動きずらいし、その気もない。手柄はお前たちに譲ることにする。


ただし、アメリカ上空に現れた異星人と協力して倒した、と言う設定にしてほしい。

その異星人は<死の流動体>に惑星を滅ぼされて、それを追ってきたという設定だ。そして、お前たちと手を組み見事倒した。しかし、その異星人は帰る惑星が無い、そこでお前たちは、お互いに干渉しないという条件で、地球に滞在許可を与える。


 これで<死の流動体>を倒したことも、アメリカ上空に現れた建造物の説明ができる。

 俺もキプロス星の科学技術を独占できるし、そこに住んで居ても干渉されることは無い。


 ただし、俺への報酬は貰うぞ!」


「我々に有利な条件だがいいのか? まぁ最後の報酬の中身しだいだが・・・

 あとは、そなたの事だが、我々の事と宇宙に追い出した件は、問わぬのか?」


「世界征服に関しては、今さら覆せないだろう、まぁ今回は大目に見てやる。

 そうそう、この3人の両親を探すのを協力してほしい、それと学校への編入の手引きをしてもらおう、要望はこれぐらいだな、最先端科学も手に入れたし、今はすこぶる機嫌がいい」


「人を機械化できる科学力か・・・いずれじっくり話し合いたいのじゃが?」


 俺が大目に見てやると言ったせいか、中条の強張った顔の表情が解れてきた、彩音にいたっては、手の小刻みの震えもなくなり落ち着いている。


「話し合いは落ち着いたらだ、いずれな」俺は立ち上がり帰る準備に取り掛かった。「では俺達は戻る。<死の流動体>は明日の朝に倒しに行く、お前らも情報統制をしておけよ」


「待て、重要なことがある」

「まだ何かあるのか?」


「そこの、お嬢さんたちの情報を教えてくれ、何もない状態で両親を探すのは無理じゃぞ」

「ああ、そうだったな……よしお前ら情報を詳しく開示するんだ」


 3人は詳細に飛行機に乗る当時の住所、両親の名前、年齢等を伝えた。


「わかっていると思うが46年経過しているからな、それを考慮するように」最後に念のために付け加えた。


 俺はテーブルから離れ、手を出し全員に触れるよう促す、全員が触れているのを確認しテレポートの準備を行い、浮遊島の部屋めがけてテレポートを使用とした。


その時「ニガサーーーン」と言う声と共に、夜巳が俺の足にまとわりついてきた、そして同時にテレポートが発動した。


 ……

 …


 浮遊島の何時もの部屋に到着した、余分な物夜巳が付いてきたが・・・

 足にまとわりついている物体を引きはがしベットに座る。


「よし俺は明日に向けて少し休息する、お前らは超能力の使い方を麻衣から習っておけ、いざと言うときに使えなかったら、意味がないからな」


「心配は及びませんよ、アレはダーリンに倒されるまで動きませんよ」


 瑠偉と美憂は麻衣に促され部屋から出て行った、どうやら今から訓練を始めるようだ。テナも後に続いて部屋から出て行った、全員が部屋から出て行くのを見送り、ベットに行って背中から飛び込んだ。


「横になって休憩するか・・・・」

「・・・・・あ、あの」


 ベットで横になりながら、寝る準備を始めた。そこに夜巳が涙目で、俺の腹部めがけてジャンプし腹部に着地する。馬乗りになり両手を俺の顔の横に落とし、顔を近づけてきた。夜巳の顔と俺の顔が接近している、よく見ると鼻水が垂れている。


「だんで、だんで、無視するんでじゅがぁ、心が折れまじだよー」


 ちょっとやり過ぎたか? まぁストーカーにはいい薬だろう。


「お前が勝手についてきたんだろう?」


夜巳は目を閉じ顔を近づけてきた、キスでもする気だろうか? 自分の子なら、オデコにキスをして<早く寝なさい>と、体を引きはがすだろう。夜巳とは夫婦でもないし、恋人でもない。


「待て」と言い右手で夜巳の顔をつかむ、手のひらが夜巳の口にあたる、彼女は声を出すが俺の手に阻まれ声は出ない。


「子供と一緒に寝る気はない! 天井で大人しくしてろ」


俺は夜巳の体を力でそのまま空中に上げ、天井に大の字で張り付けた、夜巳は天井で俺を見ながら涙ぐんでいる、そんな夜巳を放置し目を閉じた。


「いきなり拘束放置プレイとはハードです! でも夜巳ちゃんは、めげないぞ!」


 今日は、色々なことの連続で疲れたのか、気づいたら眠っていた。


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