1章 宇宙遭難編
1話 そこは闇の中
俺の名は織田兼次、おだと書いておりたと読む、地球最強の超能力者である。
なぜ最強かと言うと俺より強い力の持ち主には出会ったことがないからだ、あやしい超能力組織から声もかかった事もある。
で、今俺は飛行機に乗ってる、とある商店街の福引で金賞が当たったわけだ、特に行く気が無かったが…かと言ってすることも無いので行くか、ということになった。
俺の前方に女性3人組が座っている、彼女たちは搭乗と同時に喋り始め、今現在も続いている。いつ終わるのだろうか…これでは折角飛行機なるものを乗ってみたのだが、直接現地にテレポートで行った方がよかったような気がする。
乗客は俺と女子3人の計4人である時季外れとはいえ少ない、小型飛行機だからと言うのもあるかもしれないが、どうせオッサンだし。とか思ってるんじゃないかな? 舐められてるかもな俺…
しばらく3人の会話を聞いていると卒業旅行だそうだ、と言うことは18歳だな、ならもう少し大人になってもいいんじゃないか?
そのよく開く口を俺の超能力で閉じてやろうと俺は何度も思う、超能力は秘密にしてあるから思うだけである。
離陸してからだいぶ時間が経過し、外を見ると下に雲が見えるさらに下は海である、とくにする事もないのでまぶたが重くなりいつの間にか寝ていた。
暫らくすると機内が何やら騒がしくなって意識を取り戻し機内を様子をみる。
「ちょっとちょっと、どうなってるのよ!!」
「体がぁ、体が浮いてるよぉ~!!!」
「外が暗いですね、もしかして落ちているんですか?」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」
「死にたくないよ~~~!」
「大丈夫、皆は私が守るからぁ!」
「いや、もし落ちているなら守るとか無理ですから・・・」
前方に座っていた女子3人組は宙に浮いて各々に叫んでいる。まず自分の状況を確認すると体の浮遊感がある、付けたままだったシートベルトに腰が引っかかっている感じがするが落下感はない、窓を見ると本来明るいはずの窓は黒くなっている、シートベルトを外すと体が浮いたので超能力で自分自身の体をコントロールして窓際に移動し外を見る。
暗闇である、しかしよく見ると窓枠の一部に光が掛かっているので後方に光源があるようだ、飛行機の後方を見ると大きな円状の光が見え両脇に人影らしき姿が見える、見覚えがある人物だ、昔争った俺と同じ能力者である…
光の穴は急激に小さくなり両脇にいた人影はその中に入り見えなくなると同時に光は消えた。
最強であるが故の俺の欠陥<状況を確認してしまう>ゆえに行動が遅れる、今まではそれでよかった、誰も俺を傷付ける事は出来ないし暗殺も跳ね返す、この余裕があるから相手が行動を起こしてから俺が動いても充分間に合った、そのおかげで敵対している人物を取り逃がすこともよくあるが実力差を見せれば2度と俺の前には表れない。
しかし今回はそれがあだになったようである、まず状況を確認してみよう。
窓から外を眺める、前方、後方、下、上、横…すべて暗闇である。
強制瞬間移動をさせられた感覚はなかったので、今は消えた光の円から飛行機が出てきたと考えるべきだろう。
俺と女子3人組は浮いている。
異次元空間とか異世界は俺の知識では存在しない。
機内の明かりはついていて明るいが、飛行機のエンジン音は聞こえない。
状況を整理した結論………宇宙空間だな。
まずは安全の確保をする必要がある、飛行機は宇宙船じゃないので宇宙空間では空気が漏れるだろうから物理的なバリアを張る。
女子3人組を見ると静かになっていて気を失っている、体が横になっているがスカートが円錐状に広がっている、なるほどな無重力空間ではスカートはこうなるのか、俺は近くに寄りじっくり観察する。なんという絶景だ、パンツが丸見えだ…ありがとうございます。
「さて、戻るか…」と誰も聞いていない独り言
俺の力が飛行機全体を包み込みテレポート出来る状態になる。
………ん? 目的地は?
……まぁ、地球だろうな
…よし、地球にテレポートだ!
ここで重大なことに気が付いた、<地球の場所がわからない>と言う事実に…
俺のテレポートは疑似的なテレポートであり実は光速で直線移動しているだけである、明確な距離と方角を意識し移動している。
または、遠隔透視で見て直接移動するがこの遠隔透視も方角は必要だ。
あれ、これまずくね?
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