地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。

火曜日の風

0話 プロローグ そこは異世界でした?


 そこには木しかなかった、木が陸地を全て覆いつくしていた、生きた森の気配がしなかった、只々、光が降り注ぐだけであった。

 わずかに聞こえる水の流れる音とかすかに聞こえる木の葉を揺らす風の音。


 そんな場所に小型ジェット飛行機は着陸していた、しかしそれは車輪を出さずに倒れた木の上に乗っかっている、全くの無傷で。

 その近くに男性1人女性3人が集まっていた。


「おっさん、ここ何処ですか?」


10代後半程度に見える、女性が男性に話しかけた。

 黒い髪が肩甲骨までまっすぐ伸びて前髪は眉の上で揃えられている俗にいうお嬢様カットである、服は白いシャツにプリーツスカートを履いていて、何故か胸ポケットにペンが刺さっている。


「おっさんじゃねー、織田おりたと呼べ」

 見た目が30代中盤の短髪の男性で、ジーンズにチェックのワイシャツを着た年相応のいでたちである。


「では織田、ここは何処ですか?」と先ほどの女性が言い直す。


 それを聞いた織田は若干嫌悪な表情で言った。


「君たちは、長い時間気絶していたから詳細は分からないだろうな」


そう言うと若干の間を取り腕を組んだ、3人の女性を一通り見まわし中央の女性に視線を戻し彼女たちに言った。


「結論から言う、ここは地球ではない!!」


「異世界転生キタァァァァァァァァァァァァァ!」


 右こぶしを突き上げそう声を張り上げたのは、栗色のツインテールに眼鏡が似合う女性で同じく年齢は10代後半だろう、太ももが半分見えるフィッシュテールスカートにリボン付きのふわふわの上着を着ている。


 彼女はそう言うと、右こぶしを空に突き上げとても嬉しそうな表情をしている。

彼女はその右手を広げ織田に向けた。


「ファイヤーボォォォォール!」


彼女は真剣な表情で大きな声で叫んだ、しかし何も起きなっかった。

起きなかったが正面に立っていた織田は差し向けられた右手に見て

「俺は的か」と彼女たちに聞こえない音量でつぶやいた。


一瞬辺りの時間が止まったように誰も動かず、辺りも静かだ。


「アイスニードルー!!」

 しかし、何も起きなっかった。


「ウィンドカッター!!」

 しかし、何も起きなっかった。


麻衣まい、出ないから・・・現実見ような?」


 そう言ったのは、織田と同じぐらいの身長の短髪の女性である、少し日焼け気味の肌にジーンズとTシャツを着ている、女性らしい体系と言うより若干筋肉質のようである、その子の忠告を聞いてなかったのか、麻衣と呼ばれた女性は興奮が収まりそうにない。


「イメージかぁー、イメージが足りないのかぁぁぁ!」


 麻衣は興奮を収めようとしているのか、肩で息をしている。


「と、とりあえず。ステータスオープン!」と麻衣は人差し指を胸の前に突き出して言った。


「麻衣、出ないですよ? 落ち着こうね?」と隣にいた髪の長い女性が諭す。

「う、うん」と麻衣は力なく返答した。


 そして麻衣は深呼吸を数回して頭を少し上げどこかに向かって話し始めた。


「一体ここはどこだろうか? 木々が生い茂っている、熱帯地域か? それとも、無人島か? 生き物の気配がしない。何故だろう? なぜ私は此処に居るのだろう? ここは異世界? きっとそうに違いない! ここで、生死を分けた激しい冒険が幕を開けるのだろう! そう、麻衣は思うのであった。」


「な、なんだよそれは?」と織田が問う。

「ナレーションよ」と麻衣は冷めた表情だった。

「な、なれーしょん? は?」

 織田は麻衣に聞き返したが麻衣は答えなかった。


 しばしの静寂の後、長身の女が最初に切り出した「織田さん。説明をたのむ」

「その前に、俺は名乗ったから名前だけでも教えてもらっていいかな?」


「仕方ないですね、私は、城島瑠偉きじまるいといいます」とストレート髪の女性

「私は、出雲麻衣いずもまいよ」とツインテールの女性

佐久間美憂さくまみゆうだ」と短髪の女性


「改めて俺は、織田兼次おりたかねつぐという。オダと書いてオリタと読むぞ間違えのないようにな!」と言いながら、織田の目線は女性3人の胸元を比べるように見ていた。


「ちなみに私も、ジョウジマと書いてキジマ読みます、間違えたら……」

 と言うと若干の間を開け胸ポケットのペンを握りしめ織田向けた。

「このペンを、貴方の太ももに突立てグリグリさせていただきます!」

 そう言いいながら瑠偉は口元だけで笑い声が聞こえそうなに笑ってる。


「え、正気なの?」

「ふふ、冗談ですよ…ところで自己紹介の後、とっても失礼な事を考えてませんでしたか?」と瑠偉は見下すような目つきで織田に尋ねる。

「何言ってるんだ? 普通に聞いていたぞ?」と織田。


 瑠偉るいの眉間にはしわが寄っている「そうですか? 舐めるように全身を見てたような気がするんですが? 特に胸元を丹念に…」


「そ、そんなわけないだろ? 俺は紳士だぜ」と織田は視線をずらし言った。

「そうですか・・・まぁいいでしょう。続けてください」


「よし、では説明してやろう、なぜ我々がここにいるかを…」


織田はここに来るまでの経緯を詳しく話し始めた。


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