剣匠 殺戮深化

Aurea Mediocritas

序章

第1話 常在戦場

 レイは目が覚めた。

 6時に起きた。

 いつもの事だ。

 ベッドから起き、シーツを畳む。

 外に出て、井戸から汲んだ冷たい水で顔を洗う。

 室内に戻り、床に麻のカーペットを敷き、柔軟運動を30分程度行った。

 薄い緩衝材を入れた長袖と皮ズボン身に付け、脛下から足首までの前面と爪先に薄い鋼鉄の入った長靴を履き、長袖の上から半袖の鎖帷子に袖を通した。

 そして前腕に薄い鋼鉄が入った手甲を巻く、頭には外側が鉄で覆われた簡易な兜を被り着替えが終わった。

 それから外に出ると、自分の背の3倍程度ある木の枝に鎖がぶら下がっており、先端に10㎝程度の鉄球が付いている木の下に立つ。

 彼は目を瞑ると、鉄球を握り適当な方向に放り投げた。

 木の軋む音と結んだ縄が擦れる音を立てながら、鉄球は彼の周囲をランダムに回る。

 いつ彼にぶち当たるのか?それとも幸運にも当たらないまま止まるのか?彼は目を瞑ったまま、鉄球の回転運動の中で立っている。

 ……刹那、鉄球が孤を描きながら、彼の右脇腹に狙いを定めた。

 命中する瞬間、彼が少しだけ左に避けた様に見えた。

 しかし、鉄球は無慈悲にも彼の右脇腹当たり、鉄球の運動エネルギーは全て彼の身体に伝えられた。

 身体全体がズレた様に見えた。

 彼は地面に両膝をついて、荒い息を吐き出した。呼吸整える。

 それでも、しばらく立ち上がれなかった。

「今日はいいの貰ったな……」

 肋骨にヒビが入っているのが、感覚的に分かる。

「今日はヨシュア帰ってくるかな……」

 アイツのヘタクソな回復魔法でもあれば助かる。


 ……今日は幸先悪いな……


 父親も空の上で笑っている気がした……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る