子供の本音

雪野 ゆずり

 

お盆中、実家に帰っていた。理由は単純で、「なんでお盆に家にいないんだろう?」なんて思ったから。なんで、兄の側にいられないんだろうって思ったから。

小学生の時に、私は兄を亡くした。年は離れていたけど、自慢の兄だった。

夏生まれの私にとって、夏は兄とすごして、兄に甘えられる、そんな時期だった。その時期に、なんで、兄と離れていなきゃいけないのか、なんで、兄のいる家にいられないのか、どうしても分からなかった。

そしてもう一つ、兄は9月生まれで、もうすぐ誕生日だ。だから、お誕生日までは、実家にいたかった。

なのに、私はそれを両親には言えなかった。言ったら、迷惑だと思った。私の兄は実家からの出勤中に、事故で亡くなった。それが原因で、私を実家から職場まで通わせるのが怖いのだと母親は言った。

でも、本当は、それだけじゃないと思う。これはただの妄想だけど、両親にとって、私は兄の『おまけ』だったんだと思う。

兄の職場は社員寮の整備中で、入社してすぐに入れなかった。たぶん、今私が勤めてる職場より、兄の勤めてた職場の方が実家からは遠い。なのに、母親は「社員寮が出来るまで」と言って兄を実家から通わせた。近くのアパートを借りる事だって出来たし、兄もそうしようか悩んでいたくらいだ。なのに、そうしなかった。多分、近くにいてほしかったんだと思う。

でも、私はすぐに社員寮に入れられた。私は嫌だったのに。それどころか、就活の時点で社員寮がある場所を希望させられた。担任にも話して、斡旋してもらった。最後の方は、私もどうでも良くなっていた。昔から、私は兄ほど優しくされてかったし、いつも兄の事を、兄じゃなくても、両親の事を優先させられていた。子供ながら、従わなきゃいけないって思ってた。

だから、家の中で一番私を愛してくれていたのは、兄だった。その兄の誕生日まで、もうちょっとなのに、私はまた「誕生日の日にくればいいから」と言って追い出された。「通勤が大変だから」等と言っていたけど、実際は、長くいられのが嫌だったんじゃないかって思う。だって、実家に帰っていた期間中ずっと「こんなに早くホームシックになると思ってなかった」とか「引っ越し準備の時は楽しそうだったのに」とか言われたから。

私が独り暮らししたくない事まで知らなかった。気付いてくれてなかった。引っ越しの手伝いに来てくれた祖父達は気付いてくれて「いつでも遊びに来い」って言ってくれたのに、両親は気付いてくれなかった。

こんな親なんていないって思う人もいると思うけど、でも、無理やり独り暮らしさせられてる子供はこんなふうに考えるかもってちょっとだけ考えてほしい。どんなに親子関係良好でも、一つ見落とすだけで子供に大きな負担と、ストレスと、悲しみを与えてしまうから。


こんなどうしようもない、子供の本音だけど、誰かに届くと信じます。こんなしょうもない事を読んでくださってありがとうございました。

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