前幕・4~邂逅~
~???~
僕達は改めて顔を見合わせ、揃って大きな溜め息をついた。
まずはここが「どこ」なのかを知らなくてはならない。相談を始めようとした矢先である。
コツコツと硬い足音を響かせながら、誰かが近づいてくる。
音に気が付き一斉に音のした方を見やると、先程見た人間の男と同じような、前開きの上衣と同じ色合いのズボンをびしっと着こなした、若い男がいた。
男はさっと僕達全員に視線を走らせると、パッと人懐こい笑顔になって片手を上げた。
「やあ君達。揃って寂しい顔してどうしたんだい?」
数瞬の沈黙。
そして。
「「わーーーっっ!!??」」
辺り一帯に悲鳴が轟いた。
まずい。見つかった。逃げなければ。どこへ? そもそもこいつは誰だ? 味方か? 敵か?
そんな思考がスパークのように破裂する。
逃げようにも逃げられず、咄嗟の事態に身体が動かないでいる僕達を見て、男は高らかに笑った。
「はっはっはっ、ごめんごめん。驚かせてしまったかな。
あ、ちなみに僕の言葉は通じているかい? 言っていること分かる?」
男の突然の笑い声に虚を突かれるような形になりつつも、僕はこくこくと首を縦に振る。
幸いと言うべきか、言葉の壁は乗り越えられたらしい。
「それは良かった。君達、
色々と教えてあげるついでにご馳走してあげるから、僕についておいでよ」
そう言うと男はこちらに背を向けると、表の通りの方に向けて足を踏み出した。
だが、僕も他の四人も、その場から動こうとしない。いや、動けないと言った方が正しかった。
「……どうする? あの男の話、信じるか?」
シフェールが小声で囁く。それを受けてエティが俯きながら口を開いた。
「正直、信じられないわ。でもこの機会を逃したら、ずっとここで地下暮らしよ」
「食い物の面も心配だ。こんな地下じゃ草も獣も望めねぇだろう」
アンバスが腕組みしながら唸る。確かにずっと籠っているには、ここはあまりにも環境が悪い。
「それにさ、あの兄ちゃん、あたし達に情報をくれるって言ってただろ?
今はとにかく情報が欲しい。ここが何処なのかとか、あたし達は帰れるのかとかさ」
パスティータが強い口調で言い切る。その言葉を受けて、僕は大きく頷いた。
「そうだ、まずはこの場所、この地域についての情報を得よう。
それから、僕達がどうやって帰るかを考えればいい。案外、あの青年が手掛かりを持っているかもしれない」
腹は決まった。
少し先で立ち止まり、僕達を待っていた男が、こちらに微笑みかける。
「話はまとまったかい? この辺りは人が多いから、僕から離れないようにしてくれよ」
僕達は男の後ろにぴたりとつくようにして、人混みの中へと足を踏み出していく。
そして何とか地下を脱出した僕達の目の前には、地下遺跡よりも何倍も明るい、夜の街が広がっていたのだ。
~前幕・5へ~
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