1話

* * *


「なぁ、どうやったらアカリのハッピーエンドにいけると思う?」



そう言いながら、私の膝に頭を置き、真剣にテレビを見つめる。



そう、彼こそが私の初恋の人、柊黒炎(ひいらぎ こくえん)君。

今は大好きなギャル〇ーの真っ最中。



「私もアカリなんだけど....」



私、霧姫朱里(きりひめ あかり)。2ヶ月前、華の高校生になりました。


今は幼馴染みである黒炎君の家に遊びに来ています。



今月こそは告白しようと思っていた....けど、黒炎君もまた別の形で高校デビューしていた。



「違う。お前じゃなくて、こっちのアカリだ!」



「あー、はいはい。わかってる、わかってる。何度も言うけど、私ギャル○ーはわからないってば」



黒炎君がプレイしているのは、今、ツンデレ女子好きの男子の間で流行っている「~くんのこと、大好き! って簡単に言うと思った?」というタイトルのゲーム。


その名の通り、ツンデレ女子を攻略していくらしい。

だけど、選択肢を一つ間違えるだけでヒロインたち全員がヤンデレキャラとなり主人公を殺すという、鬼畜ゲー。


因みにヒロインたちは全員ツンデレだが、色んなタイプのツンデレ女子たちがいるらしく、その中でも黒炎君の推しキャラの黒崎アカリちゃんは黒髪ポニーテールで委員長キャラのツンデレとか。って、これは全部、黒炎君から聞いた話なんだけど。



何でも、このゲームをしてすぐにアカリちゃんに一目惚れしてリアルを捨てた? とかこの前呟いていた。リアル? って現実ってこと!?


今更気付いた....告白しても成功する確率は0%ってことが。



だけど、告白する前に諦めるなんて出来ない!

諦めるとしたら、フラれてからにしないと、なんだか負けた気がしてヤダ!


黒炎君は、綺麗な黒髪でわりと童顔。

童顔ながらも綺麗な顔立ちをしていて、クラスの女子からも人気でよく告白を受けている。だけど、告白されるたびに「好きな人がいるから」と言って断っていると噂で聞いた。


幼馴染の私には、その好きな人が誰なのかもお見通し。


それはさっきから嫌でも聞こえてくるアカリちゃん。

現実とゲームを一緒と考えてるんだろうなぁ、きっと。



だからこそ、入念な準備をしてからじゃないと私も怖くて告白なんか出来ない。



だけど、同じ名前だけあって、アカリちゃんの名前が出るたびに自分が呼ばれたと思ってドキッとしてしまう私がいた。


あぁ、私ってなんて単純なの。

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