日常怪談

西田 正歩

第1話白柱

日常生活における不可思議な出来事を、私は文にしている。

駅のホームで、電車を待っていた男の話である。

その男は、一つ乗り遅れてベンチで次の電車を待っていた。

最終と言うこともあり、無人のホームにポツリと寂しげにいた。

いや、不気味で少し怖がっていたと言う方が正解だ。

錆びれ剥がれてしまった壁や屋根、腰掛けるための木のベンチでさえ動くたんびに(ギィー)と音が鳴る音も、恐怖を膨らませてしまう要因であった。


それからその男は、電車がもうすぐ到着する時間ということもあり、立って待つことにした。

白い古びた柱は、白の塗料が剥がれているせいか、剥がれた部分が人の顔に見えてしまう。

丁度自分の顔辺りに瞳が出来てあり、(ジィー)覗かれているようであった。

その男は目を反らすと、フッと二つ先の白い柱の影から何か動いた。

柱の後ろから、チラチラとこちらを覗かせる顔であった。

男とも女とも言えない真っ白な顔が、男の方を見ているのだ。

余りの不気味さに、足がガタガタ震えだし動けずにいた。

すると、最終電車の警笛の音がなり、着いたと同時に飛び乗ったのだ。

電車の扉が閉まるまで、「南無妙法蓮華経・・・」を何度も何度も唱えた。

閉まった扉を見つめ安心していると、車掌が「大丈夫ですか?」と話してきた。

慌てて入って来たので、注意するつもりで現れたのであった。


「お客さん、危険な乗車はお止めください。」


「すっすいません。急いでたもんで・・・・・・」


「お客さん、その汗は尋常じゃないですよ。何か見たんじゃないんですか?」


「なっ何かって・・・何も見てませんよ・・・・・・」


「そうですか、ならいいのですが」


「車掌さん、ここには何か出るんですか?」


「気になりますか?」


「いっいいえ、大丈夫です・・・」


その後椅子に座り、落ち着いたのか足の震えも消えたとのことでした。

無事帰宅しましたが、その日は恐怖で眠ることが出来なかったそうです。

翌朝、恐怖はあったが電車に乗り仕事へ行ったのです。

ホームに降りて、あの(チラチラ)見つめられた白い柱を見にいきました。

そこにはポスターが剥がれかけて、風でユラユラ動いていました。


(そうか、靡いたポスターに恐怖していたのか)


男は安堵しましたが、フッと気になることがあり、駅員に聞きました

「ここの最終電車には、運転士と車掌が二人乗り合わせてるのですか?」


「いいえ、最終電車には、基本一人ですが、どうかなされましたか?」


「いっいえ・・・・・・」


「お客さん、もしかして見たんですか?」


「なっ何を・・・・・・」


次の言葉が聞こえる前に、男は改札をあとにした。


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