変わらないもの

勝利だギューちゃん

第1話

近くに小高い山があり、大きな杉の木がある。

そこで、昼寝をするのが、僕の楽しみになっている。


「また、ここにいいたの?」

「うん・・・」

「だらしないな・・・男の子でしょ?」

「男だって、夏は暑い」

「じゃあ、泳ぎに行こう」

「僕が泳げないの、知ってる癖に・・・」

「私が教えてあげる」

差し出された手を握った。



生まれ育った田舎の村を離れて、もう随分経つ。

都会の生活にも、ずいぶんと馴染んだ。

都会の生活は、とても便利だ。


そのために、ただでさえ貧弱だったのが、

より、貧弱になった・・・


退化した・・・


ある日、久しぶりに村へ帰ることにした。

生まれ育った、あの村へ・・・


「みんな、元気かな・・・」

でも、覚えていないだろう・・・

その不安が、大きかった・・・


久しぶりに村の駅に降り立った。

あの頃と変わっていないと思っていたのだが・・・


かなり、開発が進んでいた・・・


道はアスファルトで舗装された。

コンビニや、スーパーなどが、立ち並んでいた。


家も殆どが、近代的になっていた・・・


しかし、お気に入りの場所だった、

あの杉の木だけは、残っていた。


僕は一目散に、そこへ駆け寄った。

さすがに、息が切れる・・・

我ながら、情けない・・・


小高い山から見る、村・・・

いや、もう町だな・・・


あまりの変貌ぶりに、落胆した・・・

でも、時代の流れには逆らえないな・・・


そう思い、腰を下ろした・・・


しばらくして、声に起こされた。


「久しぶりだね」

「うん」

「元気だった?」

「元気じゃなかったら、来ないよ」

「びっくりしたでしょ?」

「うん、変わったね・・・」


何だか懐かしい・・・


「でもね、ここも変わらない物があるんだよ」

「何?」

「教えてあげる。行こう、みんなが君を待ってる・・・」

差し出された手を握った・・・

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変わらないもの 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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