『女神に愛されて勇者になったけど、女神の愛が重すぎてすでにつらい〜俺、勇者なのに女神が全部やっちゃいます〜』by藤原有
あらすじ
普通の人間、一宮前はある日夢の中で女神ルナと出会う。
実はこの女神、好感度がカンストしてる地雷物件だった!
ルナによって、異世界に転生された前。
当然のようにルナも一緒について来てしまった。
なにも分からない土地で、一番怖いのはモンスターより女神でした。
「もっと貪欲に劣情に身を任せて私の身体とか求めたらいいのに」
押しかけ女房?こっちは押しかけ女神だよ!
好感度カンスト系ヒロインことルナ様の暴走超特急を楽しんで下さい!
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第一話
「
「は、はあ……」
そもそも何故俺はこんな所にいる? 何故この女性は俺の名前を知っている? 何故……この人は頭を下げているんだ? 何故が頭をぐるぐる回りなんとか絞りだせたのは生返事一つだけだった。
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目を覚ますとただ真っ白な空間が虚しく広がっていた。
脱ぎ散らかしたスーツや充電中のスマホ、明日出そうと縛っておいたゴミ、ぺたんと潰れた布団等、俺のワンルーム内にあった物全てが消えてる。……汚いとか言わないでくれ、頼む。でも、取り敢えず自分の部屋ではないのは分かった。
その代わりと言うのもおこがましいが、目の前には白いローブに身を包み、鮮やかな銀髪を腰まで伸ばしている世界三大美女も平伏しそうなくらいの美しさの女性が佇んでいた。
もはや、その様子は女神と言っても遜色ない。
そんな絶世の美女……いや、そんな言葉で表せないくらいの容姿の女性がいきなり謝りながら、俺に頭を下げてきた。
……いや、待て。理解が追いつかない。
おかしい事は分かる。なのに、俺の脳はどうやらパンクしたようで全く状況が掴めん。
えっと……落ち着け、俺。なんでこんなとこにいるのか思い出せ。
今日、俺は普通に仕事を終えてワンルーム毎月四万八千円の家賃を払っている我が城へと帰城した。
そしてカップラーメンをズルズルとすすりながらYourtubeを流し見た。社畜にはこれくらいしか楽しみがないんだよ……はぁ…………。
で、食べ終わって容器をゴミ箱へダンクシュートを決めると明日は休みだと喜び勇んで心の中で絶叫しながらスーツをあたりに脱ぎ散らしたんだよな。
そのあと、風呂入って寝て……あれ?俺、ただ家帰って寝ただけじゃないか?
……あーなんだ、これただの夢か。
なるほどな、夢なら納得だが…………え、夢だよね? 怖い黒いスーツを着たお兄さんが突然ドアぶっ壊すように出てきて『てめぇ俺の女になにしやがったぁ!?表でろやおらぁ!!』とか言われないよね?少し不安になってきたぞ。
「まずは突然このようになった理由を説明をさせて下さい。私はルナ、あなたがた人間で言う所の女神という立ち位置ですね」
取り敢えず夢っぽいからホッと胸を撫で下ろした。
で、今日の夢はどうやらファンタジーの世界観らしいな。二十二歳のいい大人になってもこの手の夢はワクワクが抑えきれない。
それに、このルナという女神のような神々しさを放つ女性は本当に女神だったのか。
……ナイス俺の夢設定っ!!夢の中だろうと美人と話せるのはすごく嬉しいぜ!
「なるほど、女神なんですか」
「前さんの言いたい事は分かります。頭とち狂ってるのかって思っちゃいますよね」
「え、いやそんなことは……」
「いいんです。そう思われても仕方ないことは分かってますから」
そう言ってルナ様は目を閉じながらどうどうどうと治めるように俺の前に手を広げた。
……芝居がかっていてちょっとイラっとしたのは内緒……ってかそんなこと思ってないし!
「でも、女神なんです。これでも本当に女神なんです。お願いします信じてください、なんでもしますから」
「分かりました、分かりましたから!信じますって!」
「……チッ。なんでもって言ったんだから、もっと貪欲に劣情に身を任せて私の身体とか営みとか求めたらいいのに」
なんかボソリととんでもない事が聞こえたような気がするが気のせいだよな、うん。
劣情に身を任せるとか、身体を求めるとか……それに営み?そんなの言ってたら流石にヤバくないか?
それに、ルナ様の目が一瞬鋭くなってめっちゃ怖かったような……。
でも目をこすってもう一度見るとすっかり穏やかな佇まいのルナ様。どうやら俺の見間違えだったらしい。
「コホン。では女神である私が何故前さんをお呼びしたかと言うと……ずばり、前さんに救ってほしい世界があるのです」
「…………は?突然何を言うのですか?」
ノーモーションからのノールックパンチを顔面にもろ喰らった気分だった。
おい、夢だとしてももうちょっと設定練れよ、とツッコミかけたけど、女神様に悪態をつこうなんてことは思わない。取り敢えず説明をもとm……
「分かってるかもしれませんが前さんは地球ではフツーの人間です。特に才能があるわけでもなく、秀でた能力も一切なく、顔がそこそこいいくらいが取り柄の正真正銘ただの一般ピーポー君です」
……説明なしかい!しかも告知無しの唐突なディスり攻撃が俺の心に会心の一撃を与えた。おいやめてくれ、ただえさえ社畜ライフでボロボロの心のライフが尽きちまう。
なんで俺はドMでもないのに女神に辱められなければいけないんだ? いや、才能とかないのは事実だけどさ……ルナ様、オブラートって言葉を知ってますかね? メイドインアースなので是非とも今後のために勉強して下さいませ。
「しかし前さんに救ってほしい世界__オネという世界であなたは光魔法を行使する事が出来ます!これは千年前現れた勇者と同じ能力で、非常に貴重な能力です。伸ばし方では誰よりも強くなれますよ?」
おぉ!定番のチートスキルきたー!……って夢だから関係ないか。はぁ、こんな夢がずっと続けばいいのに___
「まあ、地球ではなんの役にも立たないですけどね。ふふっ」
褒められたと思ったら落とされる。さっきのがお腹を殴られたくらいのダメージであれば今のは爆弾でゼロ距離から吹き飛ばされたレベルのダメージを心に食らった。
落として上げて落として、蓄積ダメージがエグい事になっていた。もうやめて!俺のライフはもうZEROだ!……自分泣いていいですか?もうやだ、夢なら早く覚めてくれ……
「ですからお願いです。世界を救ってください!私と一緒に!!」
「…………え?」
ちょっと待て、何気にサラッとおかしな事を言ったよな!?
私と一緒にってルナ様言ったよな!? なにそれ、能力を与えてあげたから頑張って下さーい! とかそれじゃあお前を持っていくぜ、この駄女神! とかいう展開は聞いたことある。だがな……押しかけ女神なんて聞いた事ないぞ!?
「いやいやいやいや、ルナ様は女神様ですよね?」
「はい、そうですよ?」
ルナ様は何を当然の事を?と首を傾げてるんだが……いやおかしいよね?
「それなら普通は力を与えました。なので世界を救ってください、それじゃあ、さようなら〜。とか言って普通は転移させるんじゃないですか?」
「そんなっ、離れるなんて勿体な……。コホン、そんな他の女神みたいに無責任な事はしませんよ。きちんと朝はベットの上でおはようから夜はベットの上でおやすみするまでつきっきりのパートナーとして行動を共にさせてもらいます!……二人の夜は特に」
……あかん、女神のイメージが壊れそうだ。
咳払いをしてごまかそうとしてるが離れるなんて勿体ないって言いかけてたぞ。それに最後もボソッと夜の事言ってたな。なんて事口走ってるんだルナ様よ。
それに、もう見るからにルナ様の中での俺の好感度がカンストしてやがる。鼻息荒くなってきてるわ、思ったよりグイグイ来すぎてるわでいよいよ疲れてきたぞ。まぁ、夢だからとりあえずハイハイ言って目が覚めるのを待つか……。こうなるんだったらせめて安らかな夢がよかったかもしれない……やっと貰えた休みなのになー。
「こ、光栄ですね。女神様がそこまで側に居てくれるとは心強いなあ、ハハ……」
苦虫を噛み潰したような笑顔を顔面に貼り付けて、ビーフジャーキーよりも乾いたパッサパサの笑い声を漏らしながらロボットもぶったまげるくらいの棒読みで答えた。
頑張って笑おうとしたけどすまん、これが精一杯だわ。
だが、ルナ様には喜んでいただけたようで人魚姫も黙って海に帰るくらい美しい笑顔を見せて俺の手を握った。
「そう言ってもらえて嬉しいです! では、来てくれもらえますね?」
「そうですね、お力になれるか分かりませんが」
「ならば良かったです。では、行きましょう! 善は急げと言いますし!」
そう言ってルナ様はしゃがんで床に両手をかざすと、凄まじい轟音が空間いっぱいに鳴り響いた。地面は揺れ、空気は黒く濁り不穏な気配が立ち込めた。
あれ……?ま、まだ目が覚めないのか?そろそろ目覚めてもおかしくないんだが……
「間もなく、『オネ』へのゲートが開きます。詳しい事はそちらで。……それでは不束者ですが、末長くお願いしますね」
「え、ちょっと、それって結婚のあいさ……ってうわあぁぁああーーー!?」
振り向きざまに天使のような笑顔を浮かべているルナ様の発言にツッコミをいれようとした瞬間、足元の感覚がフッと無くなった。比喩表現ではなく本当に真っ逆さまに落ちていた。おい、しかもゲートって扉とか魔法陣とかじゃなくて落ちていくのかよ! なんっだそれ!?
頼む、夢なんだから早く覚めてくれ! 今まで見た夢の中でトップを争う天国と地獄を味わいながら俺の意識はぷっつり裁断された。
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第一回は藤原有さんの『女神に愛されて勇者になったけど女神からの愛が重すぎる』でした
もちろん許可は頂いております!
カクヨムとなろう両方に出されていて(今はなろうのみ)作品ですが、すっごく面白いのでぜひ覗いてみてください!
ついでにこっちにもurlを
https://ncode.syosetu.com/n4136ex/
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