第1話『妻』との出会いは唐突に

第1話 『妻』との出会いは唐突に(前編)


 そう、あれは確か一億と二千年前……と言いたいが、この蛇『妻』と出会ったのはつい最近、一週間前くらいの話だ。どんな経緯で出会いこんな状況に陥ってしまったのかと言うと少し長くなる。しかし内容は至ってシンプルだから飽きずに聞いて貰いたい、本当に単純で下らない話だ。



 お世辞にもイケメン、いや、どちらかといえばブサメンの部類に入り、人付き合いも好きじゃない俺だが高校時代は結構モテていた。今思えば高校デビューという訳ではなく、生きていれば誰にでも来ると言われている『モテ期』というやつだった。しかし問題なのは、このモテ期のピークが受験と重なる高校三年時に訪れたことだ。

 そんな高校三年時に修学旅行で訪れた神社。ここは龍神様だか弁天べんてん様だかがまつられていて、縁切りの利益があるとして有名らしい。俺にはどうしても合格したい大学があり受験勉強に集中したかった。その場のノリもあり、誰かと付き合っているわけじゃないんだからいいだろうとばかりに縁切りの願掛けをしてしまったのだ。

 願掛けの効果は抜群だった。修学旅行から帰ってくると、男女問わず俺の周りから人が離れていった。ついでに大学受験も失敗し、近場の私立大学へ通う羽目となった。この時ほど自分の馬鹿さ加減を呪ったことはない。完全に八つ当たりだがついでに俺は神をも呪った。こんなことばっかり望みを叶えるんじゃねぇよと。

 それからというもの俺は近所の神社へ初詣はつもうでには行かなくなった。あぁ、ちゃんとわかっている。完全に筋違いの八つ当たりだ。



 大学を卒業し、親元を離れて企業に就職した俺だが相変わらずだった。『縁結び』という言葉があるが、俺はきっと結ぶひもを根元から断ち切られている状態なのだろう。好きな人が居なかったわけじゃないが、ことごとく邪魔が入ったり部署が変更になったりが続く。そのうち他人に興味がなくなり一人になるのに慣れきっていた。

 しかし誰だって歳を重ねればあせり出す。同級生がどんどん結婚していくなか、実家に帰省きせいした時に親から言われたのがこれだ。


『お前もそろそろ身を固めにゃいかんぞ?』


 それからというもの、実家からはきあらば見合いの話が届くようになった。一応見ては見たが好みの相手は居なかった。何より趣味の欄を見て話が合いそうにない。そもそも男と女で趣味が合う筈無いのにどうしてこんな項目があるのだろうか、はっきり言って謎だ。「この趣味だけはやめて!」みたいな人のためにあるのだろうか? よくわからない。

 そりゃ俺だって「私の趣味は他人の家のゴミあさりです、ぐふふふ」とか言われたら正直引く。というかそんな趣味持っていたとしても普通は仲人なこうどに止められて書かないだろう。


 とにかく親に心配をかけているのは事実だ。ここで俺はダメ元と知りながら一応は努力してますという所を見せる作戦に出る。インターネットでお見合いパーティーの会員に登録し、出席してみたりした。当然気乗りはしなかったが。

 まぁ案の定というか、これも結果は散々だった。数人の女性と話したがそれとなく遠回しにお断りの言葉を投げかけられた。年収が300万程度な無趣味の平社員ではこれが妥当なのかもしれない。相談口で何度も通うことが重要だとも教えられたが、こっちはそれが無駄だということを悟っている。何より女が無料で男だけ5000円も取られるというのが気に入らない。もうここに来ることはないだろう。



 ……なんか話が随分とれてしまっているが、俺こと『矢萩やはぎ修平しゅうへい』がどれだけモテない男かはわかって貰えたと思う。


 で、肝心の妻との出会いだが、後半へと続く。

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