49話 ウルフの子
ギリースでの道中ユウとミーシェは休憩するため洞窟の中で涼んでいた。
「ユウ、ジュース作ったよ。飲も?」
「ああ。」
ギリースまでの道は火山帯のため暑く、二人は足取り重く、ちまちまと進んでいた。
「ふぅー…生き返るー…」
「そうだねー…」
「…ああー…歩きたくない…」
「あとどんぐらーい?」
「まだ半分も進んでないぞー?」
「ええー…もう歩きたくないよー…」
「ちょっと早いけど今日はここで休むか?」
「…うーん…でも早く行かないと…」
「それも大事だが…オレはミーシェの体調の方が大事だけどな。」
「え?」
「ミーシェ。さっきからお前…具合悪いだろ?」
「…え?」
「気づかないと思ったか?」
「それは…」
「…今日は俺が飯作る。休んどけ。」
「でも!私の仕事…」
「いいから。休んでろ。」
「…うん。ありがと…」
よし!今日はミーシェのために美味しいご飯を作ってやるか!
ユウくんの〜3分クッキング〜!
さーて。今日は楽チン暑い時におすすめ!
冷やし茶漬けを作っていきたいと…は!
ご、ご飯がないんだった…!
万策尽きた…
俺にもう…作れる料理は…ない!
「何やってるの?ユウ。」
「ミ、ミーシェ!ほらほら!お前は寝てなさい。」
「…でも…本当に大丈夫?」
「大丈夫だから!」
「…うん。」
ミーシェを横にさせた。
さて、確か小麦粉があったよな…これをこねて…よいしょっと…
伸ばして…切って…茹でて…なんかこれも…これも…ぶち込め!
…出来た!
「ユウ…大丈夫かな…頭痛い…」
ミーシェはおぼつかない足で、ユウの元へ向かった。
「…お、ちょうど出来たぞ。ミーシェ。」
「出来たって…何作ったの?」
「ほら、俺のいた世界では定番の…うどんだ!」
「う、うどん?」
「ああ、小麦粉をねってだな…まあ今度教えてやるよ。ほら、食えよ。」
「…食べれるの?」
「し、失礼な!ちゃんと食べれるよ!…多分。」
「多分?」
「い、いいから食ってみろって!」
「い、いただきます…!」
ゴクリ…
「ど、どうだ?」
「お、美味しい…」
「本当か!ははっ!良かった!ほらほら、もっと食えって!」
「うん!うーん…美味しい!」
「そうか…そうかぁ…」
「ふふふ…ありがと!」
「お、おう。…ほら、まだ寝てろ。」
「うん。」
「ほら、これ頭に乗っけとけ。」
「これは?」
「濡らしたタオルだ。おでこに乗っけると熱を覚ます効果があるんだ。ゆっくりおやすみ。」
「…うん。ありがとう。」
ミーシェside
何時間たっただろうか。ミーシェは目を覚ました。
「あれ?…そっか私熱が出ちゃって…ユウ?」
「ぐぅ…ぐぅ…」
ユウはミーシェの近くの壁に寄りかかってぐっすり眠っていた。
「ふふ…寝ちゃってる。可愛い…」
ミーシェは顔にかかっているユウの髪を払いながら起き上がった。
「うーん…もう治ったかな?」
くぅん…
「ん?何今の?」
くぅん…
「誰かいるの?」
…くぅん…
「え?この子…」
「ん…あ?あれ?…ああー…寝ちまったか。」
「あ、やば…」
しばらくたってユウは目を覚ました。
「ん?…おいミーシェ。何してんだ?」
ミーシェは洞窟の隅でうずくまっていた。
「べ、別に!」
「?…熱は下がったか?」
「う、うん!もう元気いっぱい!」
「そうか…良かった…」
「大丈夫だから!心配しないで寝てて?」
「いや、俺はもう大丈夫だが…お前はまだ寝てなくていいのか?」
「わ、私は…大丈夫!ユウ、寝てなって!」
「ん?なんでお前そんな隅にいるんだよ。こっち来いよ。」
「いや、風邪移すといけないし…」
「…お前…なにか隠してるだろ?」
「ぎくっ!そんなこと…ないよ?」
「今自分でぎくっ!て言ったしな…」
「ぎくっ!」
「ほら。」
「わ、私は別に何も…」
くぅん…
「あ!ダメ!」
「なんだ?今の。」
「ちょ、ちょっとあくびが出ちゃって!…くぅん…くぅん…なんちゃって!ははは…」
「可愛い。もう1回やってくれ。」
「え?」
「じゃなくて!いつまで隠すつもりだ?」
「だから私はなにも…」
するとミーシェのうずくまっている腹からゴソゴソと物音がする。
「お前…立ってみろ。」
「え?今はちょっと…気分じゃないって言うか〜…そんな感じ。」
「どんな感じだ!いいから立てって!」
「やめてぇ!私は絶対に立たない!」
「なんだその意地は!いいから立てって〜…」
「ダメぇ…あ…」
チョコチョコ…
そんな足音を立ててミーシェの元から出てきたのはまだ小さいブラッドウルフの子供だった。
「こいつは…」
「ち、違うの!この子は…私の…カツラだから!決してウルフの赤ちゃんだとかそんなんじゃないから!」
そう言ってミーシェはブラッドウルフの子供を頭にのせた。
「どんな言い訳だよ…」
「ほ、ほんとだし!」
「ほう…お前のカツラはくぅんって鳴くのか。」
「そう!そうなの!このカツラは便利で便利で…困ってるの!」
「見苦しいぞミーシェ。見せてみろ。」
「ダメぇ…この子は…この子だけはー!」
「やっぱりブラッドウルフか…」
「食べないでぇー!この人でなし!」
そう言ってミーシェは小石を投げてくる。
「いて!落ち着け!さすがに食わねえよ。…ていうか俺の場合人間辞めてるから…人でなしは通じないぞ?」
「…ほんとに食べない?」
「お前俺をなんだと思ってるんだ?…それで?こいつはどうしたんだ?」
「私が起きた時洞窟の前で倒れてたの。だからミルクあげたら懐いちゃって…」
「ほう…で?どうするんだ?」
「…へへへ…」
「なんだよ…」
「それは…ねえ?分かってるくせにぃ…」
「自分の口ではっきり言わないとこいつを森に向かって放り投げるぞ。」
「わかった!わかったから!いったん落ち着こう!」
「…」
「…」
「よし!さよなら!」
「待って!わかった!わかったからぁ!」
「ほれ、言ってみ。」
「ちゃんと面倒みるので…この子を飼ってもいいでしょうか?」
「…ふむ。ちゃんと言えるじゃないか。」
「ねーえー…いいでしょー?」
「そうだなぁ…俺たちの旅は結構危険だからなぁ…」
「大丈夫!わたしが絶対に守ってみせる!そして私をユウが守ってみせる!でしょ?」
「でしょ?じゃねえよ。」
「うう…お願い?」
こら!上目遣い!
「ね?」
「うう…」
「お、ね、が、い…はあと!」
「はあとって…たく…しょうがねえなぁ…」
「やった!」
「ちゃんと面倒みろよ?」
「うん!よろしくね?マシュマロ?」
「ん?マシュマロって…こいつの名前か?」
「うん!素敵でしょ?」
「…ぷっ!」
「な、なんで笑うの!?」
「マ、マシュマロって!センスなさすぎだろ…」
「う、うるさい!ユウだって私の偽名考える時にムーシェとか言ってたくせに!」
「ははははは!マシュマロ…ははは!」
「笑うなぁ!」
「わん!」
「…」
「…」
え?こいつブラッドウルフだよな?
「「…犬?」」
こうして新たな仲間が加わった。
…わん!
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