37話 ダークエルフ
サラと話した次の日少し遅めの朝を2人で向かえた。
「ふあぁー…んん…おはよお姉ちゃん…」
「悪いが姉さんじゃないぞ。」
「…あれ?ユウ…お姉ちゃんは?」
「もう帰ったよ。」
「もう帰っちゃったの?」
「ああ、そんなに長くはいれないからな。」
「そっかぁ…帰っちゃったかぁ…」
「なに、心配するな。また会えるさ。」
「うん…あれ?」
「どした?」
「じゃあなんで私とユウが一緒に寝てたの?」
「それはお前が…」
ふと昨日のことを思い出してしまった。
ボフン!
顔が熱くなったのを感じた。
「ユウ?」
「い、いや!な、なんでもない…」
「?そっか、また私のくせが出ちゃったのか…治さないとなぁ…ユウも迷惑だもんね。」
「…別に。」
「え?」
「俺は別に構わないけどな。」
「ええ?」
「その方が安心して寝られるんだろ?ならそっちの方がいいだろ。」
「ほんと!?」
「ああ。」
「わーい!ユウ大好き!」
「ぐはぁ!」
「ユウ?」
「そういうことを簡単に言うんじゃない…誤解するだろ…」
「じょ、冗談なんかじゃないもん!私ユウ大好きだもん!」
「…」
「…え?なんで黙るの?!…あれ?わたし今すごい恥ずかしいことを…あの…えと…」
ミーシェの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
ボフン!
「わ、私ご飯作ってくる!」
逃げるようにその場を去っていった。
「〜ッ!くそ…なんだこれ…天然娘め…」
顔が赤くなったのを隠してその場にしゃがみ込んだ。
「きょ、今日の朝ごはんはハ、ハムエッグにひてみまひた!」
「…なんて?」
「は、ハムエッグ!」
「あ、ああ…」
動揺しすぎだろ!こっちまで緊張するわ!
「ど、どお?お、美味しい?」
「お、おお、美味いよ…」
「…ふふ。よ、良かったぁ。」
「てかお前いつも、良かったぁ。とか言ってるけどもっと自信持てよ。お前の料理プロ級だぞ?」
「え、そ、その…」
「ん?」
「ありがと…」
頬を紅潮させながら言う。
なんだよ!なんだその反応は!ち、調子狂うなぁ…
「そ、それで今日のことだが…」
「う、うん。」
俺はここで一呼吸する。
「エルフの里に行こうと思う。」
「…そう…だね。」
「別にまだ心の準備が出来てないなら後日でもいい。どうする?」
「ううん。大丈夫。」
「心配するな…ちゃんと守ってやるから。」
「…うん。ありがと…」
「ここから東にちょっと進んだところだ。休んだら出発するぞ。」
「うん。」
そのあと東に少し進むと自然に囲まれた集落についた。
「…ミーシェ?」
「…ここ。」
「ここが…お前の故郷か…」
「うん…」
「入って見るか?」
「…」
「…今度にするか。」
「ううん、大丈夫。」
「そうか、じゃあ行こう。」
「うん…」
そのまま俺たちは入口にある花のアーチをくぐった。
すると門をくぐった所には1人の兵士がいた。
「この里になんの用だ?」
「ただの観光ですよ。」
「…そうか。通行料は2人で銀貨4枚だ。」
「はい。」
「たしかに。あらためて…ここはエルフの里。7大魔王、嫉妬のレヴィアタンが治める里だ。」
「は?」
「なあミーシェ前からここは7大魔王が治めてたのか?」
「ううん。前は違った。」
「じゃあそのレヴィアタンってやつは知ってるか?」
「うん。いつも変なマスク被ってた、女の人。素顔はお姉ちゃんを含めた誰も知らないの。」
「不気味なやつだな…」
「うん。」
「ここに宝玉はないんだよな?」
「うん。ここにはないよ。」
「…しかし…」
「うん。」
「エルフの里とか言ってるけどほとんど人間しかいねえじゃねえか!どうなってんだ?」
「わかんない。でもこれなら大丈夫そう。…里の構造自体は前とそんなに変わってないみたい。」
「お前の家はどこにあったんだ?」
「…たしか…ここを進んで…左だった気が。」
「…行ってみるか?」
「うん…」
「ちらほらエルフはいるみたいだな。」
「うん。昔はエルフと人間はが一緒に暮らすなんてことなかった。ほんとに変わったなぁ…」
そのまま雑談しながら進むとポツリとひとつの民家があった。
「間違いない。ここだ。」
「なんで一軒だけ離れたところにあるんだ?」
「さあ?」
するとそこから一人の少女が出てきた。エルフ族だ。…ただ…
「髪が…黒い?」
「もしかして…」
すると急に大きな声が聞こえた。
「おい!ダークエルフの、カナが出てきたぞー!」
叫んでいたのはエルフ族の少年だった。
「うわっ!ほんとだ…逃げろー!呪い殺されるぞ!」
周りの大人もヒソヒソと何かを話し始めた。
「…これは…」
カナと呼ばれる女の子は下唇を噛み締めながら家に入っていった。
「…ユウ…私…ダメかも…」
「ミーシェ?」
「少しは…そういうの無くなってると思ってた…」
さっきの女の子はバケツを持って出てきた。水汲みにでも行くのだろう。
「首…見えた?」
「…ああ。」
首にはたしかに首輪があった。
この世界には奴隷の制度がある。ダークエルフの少女が付けていたのは奴隷の首輪だ。
「おらぁ!とっととくんでこい!」
中からでてきた男の人が少女を蹴飛ばした…
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
何度も必死にあやまる少女。
「…ユウ。私ここに来れば…何か吹っ切れるきがしてた。」
「…」
「でも…やっぱ…ダメだ。」
「…ミーシェ?」
「…離れて!」
「ミーシェ?」
近づこうとしたが、黒い雷に阻まれた。
「ミー…シェ?」
「ごめん…私…耐えられない…」
木々が急な風で揺れた。そして、小鳥が一斉に飛び立った。
「その…目は?」
「過去にもあったから…分かるの…」
「まさか…」
直後、ミーシェは森に向かって走り出した。
「おい!ミーシェ?!」
ミーシェside
ダメだ…このままじゃ…あの時と同じだ…離れなきゃ…
ダークエルフの少女を見た時私の中で何かが切れかけた。
昔にも味わったことのある感覚だ。このままじゃまた…みんな殺してしまう。離れなきゃ…
「ミーシェ!」
走っていた私は止められてしまう。
「離して!」
「落ち着け!」
「…もうダメ…ユウ…助けて…」
「ミ、ミーシェ…」
私の目は真っ黒に染まっていた。
「ヴィーナスフラッシュ。」
だれか!助けて…こんなの…
「ミーシェ!魔法を…解け…」
ユウ!違うの!こんなの…私じゃない。
「フフフ…みーんな…殺してあげる♪」
私の意識はそこで途切れた。
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