24話 勇者到着
スフラン共和国の中央通りは今日大きな盛り上がりを見せた。
大通りの真ん中を1台の馬車が通っていく。
「きゃー!勇者様ぁ!」
「こっち向いて〜」
そんな黄色い歓声を受けながら馬車の中から五人組の少年、少女が手を振っている。今日はスフラン共和国に勇者一行が到着する日であった。
ユウ&ミーシェside
「すげぇ賑わいだな…。」
「そうだね…中にいるのは誰かわかる?」
「うーん…ここからじゃ見えないか…かと言って近づくとバレる可能性があるからなぁ…」
「やっぱり周りには王国からの護衛付きなんだね。」
「そうだな。」
「とりあえず情報によれば3日は滞在するらしい。それまでに勇者の特定と作戦を考えよう。」
「そうだね。」
「とりあえず宿に戻ろう。」
「うん。」
勇者side
「よくぞ来てくださった。勇者殿。」
「いえ。こちらこそ盛大な歓迎をありがとうございました。」
俺の名前は神崎 渉。このスフラン共和国に宝玉を取りに来たグループのリーダーをやってる。
「さあ勇者様方。部屋の方にご案内致します。」
「いこ?渉。」
「おう。」
彼女の名前は木下 望美。俺の幼なじみだ。連携を取りやすいと言うことで俺のグループの副リーダーをやってもらっている。
ほかのメンバーは俺と一緒に橘につるんでいた、取巻 真司とクラスの副委員長の花園 美琴、その友達の野崎 美羽だ。
元の世界でも結構仲が良かったので結構やりやすいグループだ。
「おい、渉、部屋わけどうする?俺トイレ近いからトイレの近くで頼むわ。」
「おう、お前がトイレが近いことは今に始まったことじゃないからな。全然いいぞ。」
「サンキュ。」
「じゃあ私は渉の隣で。私が起こさないといつまでも寝てるんだから…」
「そんなことないぞ?」
「何言ってんの?向こうの世界でもこっちでもずっとそうじゃない」
「あれ?そだっけ?」
「たく…」
「じゃあ私たちは残りの部屋で適当に別れておきますね。」
「あ、ありがとう。花園さん。」
「いえいえ。」
「わぁーい。隣にしよ?美琴ちゃん!」
「ふふふ…いいですよ。美羽さん。」
楽しいな…俺はこのグループが大好きだ。
「ではお食事が出来たらお呼び致しますね。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言って案内してくれたメイドさんは立ち去っていった。
「…そう言えば渉。どうする?あの…誰だっけ?裏切ったやつ探すの…やる?」
「…藤山か。どうせ生きてないだろ。探したところでアイツは裏切り者だからな。」
「だよね、私も渉の意見に賛成。」
しばらくしてメイドさんが呼びに来てくれたので俺たちはウキウキしながら食堂へ向かっていった。
「おお…豪華な食事ですね。」
「あなたがたの歓迎パーティーですからな。盛大にやらなくては。」
「ありがとうございます。国王様。」
「長旅でお疲れでしょうからな。楽しんでいってくだされ。」
「はい。では遠慮なく。」
「それよりも神崎殿、ピルーク王国でのことは聞きましだぞ。なんでも魔神軍の襲撃を無事撃退したとか。流石ですな。」
「いえ、天城…いえ、俺たちのリーダーがほとんど倒してしまいましたから。ははは。」
「ほう。それはすごい。」
「もちろん俺たちも十分鍛えたのでしっかりと戦えますよ。」
「心強いですな…ですがロキア帝国でのことはご存知ですかな?」
「…はい。最強を誇った騎士団が全滅に追い込まれたとか。しかも宝玉を盗まれてしまったんですよね…」
「ロキア帝国はここからそれほど距離はありません。なのでもしその者が狙うとしたら次はここでしょうな。」
「心配ありません。俺達が必ずピルークに運びます。」
「頼みましたぞ。お楽しみの邪魔をする訳には行きませんな。では楽しんでいってくだされ。」
「はい。」
勇者達の歓迎パーティーは夜遅くまで続いた。
ユウ&ミーシェside
「とにかく明日城に偵察しに行くか。」
「そうだね。」
「誰が来てるのやら…」
恐らく江ノ島や松山は天城のグループに合流しているだろう。あいつらが来てくれると手っ取り早いんだが。江ノ島の顔を思い浮かべるとあいつから頬に受けた火傷が痛む。俺の頬はあいつの魔法によってやけただれている。治さないの?とミーシェに聞かれたがあいにくおれは治す手段を持っていない。まぁミーシェなら治せそうだが、この傷消えても俺の復讐心は消えないだろう。
「…あいつだけは…信じていたんだけどな…」
「ん?どうしたの?火傷が痛む?」
「いや、大丈夫だ。…ご飯にしようか。」
「うん。今日はマンドレイクで野菜スープを作ってみたの。食べて食べて。」
「…いただきます。」
そう言って一口入れると魔物の骨からとったダシの味が口いっぱいに広がりマンドレイクの甘みとよく合う。…美味い。
「…どお?」
「うん。美味しいよ。流石だな。お前の料理食ってると魔人でも悪くないなって思うな。超うめぇ。」
「ほんと?…へへへ…私もいただきます。…う〜ん!我ながら上手くできたなぁ。えへへ…」
嬉しいのか照れているのか。ミーシェとの食事は静かだった。
「ごちそうさま。さて、明日は早いぞ。もう寝ておこうぜ。」
「うん。お風呂入ってくる。」
「ああ、出たら先寝てていいからな?」
「ううん。そうするとユウは床でねるでしょ?だからダーメ。」
「さいですか…」
「じゃあおやすみ。ユウ。」
「ああ。…おやすみ。」
そういった瞬間ミーシェは俺の腹に手を回してくる。急いであっちを向かなくては。
「…今日は早いな。」
「えへへ…おやすみ!」
「おやすみ。」
そう言って2人仲良く眠りに着くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます