21話 優の過去と初デレ
ロキア帝国を後にしたユウとミーシェはスフランを目指す旅をしていた。
「…なぁミーシェ。ひとつ思ったことがあるんだが。」
「ん?なに?」
「ここの魔物弱すぎね?」
「当たり前じゃない。ここの魔物がみんな最果ての洞窟クラスだったらこの世界はとっくに滅んでるよ?」
「じゃあ最果ての洞窟の魔物が出てきたらまずいんじゃ…」
「心配しなくても最果ての洞窟の魔物は洞窟から出ることは出来ないから大丈夫。」
「ふーん。そうなのか…」
「あ、その岩陰にオークが隠れたわ。」
「おう。」
旅を初めて半日がたったが、特にトラブルはなく、順調にスフランに向かっていた。
「さっき商人に聞いた話だとしばらく進んだ所に休むのに適した洞窟があるらしい。今日はそこで野宿しよう。」
「わかった。」
しばらく進むと小さな洞窟を見つけた。商人が言っていたのはきっとここだろう。
「さてと暗くなる前に野宿の準備をしちまおうぜ。ミーシェは晩御飯の準備を頼む。」
「はい!隊長!」
「頼んだぞ!」
「ラジャー!」
少し乗ってあげただけでこの通りである。
チョロいなw
さて…俺は寝床の準備でもするかな…
「そう言えば寝床はどうする?毛布1枚しかないから、お前が使えよ。」
「え?2枚あったじゃん。」
「…それを昨日お前が寝ぼけて切り裂いたんだろ…」
「あ、あれ?そだっけ?なら一緒に使おう?」
これだからコイツは…
「…あのなぁ、今は人間では無いとはいえ一応男と女なんだぞ?もっと自分を大事にしろよ…」
「私、ユウなら大丈夫だもん。」
「でもなぁ。」
「…ダメ?」
結局俺は強くなったとはいえ、この上目遣いに勝てる術を持ち合わせていなかったので引き下がるしかなかった。
…てか俺も割とチョロいな。
「いいか?抱きつくのは許す。しかしお前のステータスだと俺も痛い。分かるな?」
「…う、うん。」
「おやすみな。」
「おやすみ。」
「…ねぇユウ?起きてる?」
「…ああ。どうした?」
「私は復讐の神様だから、誰であっても心に抱いてる復讐の気持ちを映像みたいにハッキリと分かるの。だからユウを見た時もユウの復讐心がハッキリわかった。」
「…そうか。」
「過去のこと…話してくれる?」
「…」
「もちろん、話したくないことならいいの。無理に聞かない。」
「…そうだな。お前には話しておくか。」
「ユウ…」
「…俺はこの世界に来る前は一人暮らしをしていた。別に何か理由があったとかそんなんじゃない。ただ一緒に暮らす家族がいなかったんだ。」
「…あの時殴られていた女の人は…」
「母さんだ。俺の物心つく頃から母さんは親父に殴られてた。理由はわからんがそういう性格なんだろう。毎日の仕事のストレスでそれは日に日にヒートアップしていった。…そして暴力を受け続けた母さんは…死んだ。」
「…」
「DVで殺される。よくある話だ。…親父はそれを見ていた俺を口封じのために殺そうとした。でも殴られそうな時…姉貴が俺を庇ってくれた。」
「…お姉さんがいたの?」
「ああ、だが親父に殺された。その結果2人の死は母さんと姉貴が喧嘩して互いに2人を殺した。ということで片付いてしまった。」
「そんなっ…ひどい…」
「その後俺は捨てられて孤児院に預けられた。そのまま早く孤児院を出たかったから中学卒業と同時に一人暮らしを始めた。…だから俺は親父を許さない。…こんなところだな。…ミーシェ?」
「…うう…ぐすっ…」
「…なんでお前が泣いてんだよ?」
「…ううっ…だってぇ…そんなに辛いこと…ユウは一人で抱え込んでたの?…それなのに私のわがままに付き合ってくれてたの?」
「…気にすんな。俺は大丈夫だよ。」
「…私に…何か出来ること…ないかな?」
「…心配するな。俺は大丈夫。お前のことはしっかり守るし、お前の姉さんも助け出してやる。だから心配しなくても…」
言いかけた瞬間、ミーシェは俺を引き寄せ抱きしめた。
「…ミーシェ?」
「うう…ぐずっ…ユウ我慢しちゃダメ!」
「…」
「…なにか…できることある?」
「…そうだな…じゃあ今夜は俺がお前に抱きついて寝てもいいか?」
「…うん!」
さて…泣かせるつもりはなかったんだがな。
今夜は俺が抱きついて寝るはずだったが一転、今はミーシェが俺に抱きついている。
「むにゃむにゃ…ユウ…大丈夫だよ…」
「…ありがとな…ミーシェ。」
ミーシェの温もりを感じながら優は心地よい眠りにつくことが出来た。
「ユウ?起きて?朝だよ?」
「…まだ寝る…」
「むー。起きなさい!」
「うー…おはようミーシェ。」
「もう!お寝坊さんなんだから!」
「…お前が言う?」
「そ、それはまぁ…」
「まぁ、飯食ってそろそろ出発するか。」
「うん。」
「…昨日の事だか…なんだ…その…お前は気にするな。親父に復讐するも何もこの世界に来ちまったからもう関係ないしな。今は元クラスメイトやお前の姉さんの方が優先だ。」
「うん。でも辛くなったらいつでも言って?出来ることならなんでもするから!」
「…ありがとな。」
「それに昨日ユウが初めてデレてくれたしね。私に抱きついて。
ふふふ…可愛かったなぁ…」
「う、うるせー!とっとと行くぞ!」
「ふふふ…」
「笑ってんじゃねーよ!」
「ごめんごめん。行こ?」
「…たく。」
優達のスフランに向けた旅は続く。
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