9話 化けの皮
2層目に降りた菜々と由紀はさっきはぐれてしまった、優を探していた。
「おーい、優くーん。返事してー。」
「…さっきまで一緒にいたんだから遠くには行っていないはず…」
「そうだよね…ふざけてかくれんぼしてるとか?」
「…ダンジョンの中で彼が勝手に?それはないと思う…」
「だよね〜…でもどこに行ったんだろう。」
「…取り敢えず進んでみよう…」
「…そうだね」
(ほんとどこ行っちゃたんだろう…)
「随分と攻略に時間がかかっているようですね。おかげで間に合いました。」
「どういうことですか?セバスさん。」
「それは、「私から説明致しましょう。」」
「…王女様。」
「なっ!どうしてあなたまでここに…」
「大丈夫です。しっかりあなたに分かりやすい説明をしますから。」
「では優くんこちらに」
セバスさんに案内されたのは祭壇の上だった。
「祭壇の上に乗りましたね…では説明致します。これからあなたには新しい勇者を召喚するための生け贄となってもらいます。」
「は?…生け贄?どういうことですか?!」
「言ったまんまの意味ですよ。」
「…ふざけないでくださいよ…冗談ですよね?」
「ふざけないでください?それはこっちのセリフですよ…あなたをこの世界に召喚するために何人の人間が犠牲になったか分かっているんですか。」
「は?犠牲?何のことですか!」
「…分からないでしょうね…なんも知らずに召喚されてきたのですから。あなたがた38人をこの国に呼ぶのに38人あまりが犠牲になりました…それは仕方ないことです…魔神を止めるためですから。ですがそう簡単に生け贄が38人集まるはずがありません。罪人やを使っても20人程度しか集まりませんでした。他国の罪人を連れてきてもやはり最後のひとりが足りませんでした。そこで名をあげたのが私の父です。父はこの世界を守るために自らを犠牲にしてあなたがたを呼び出したのです。その時誓いました。私は父の意思を継いでこの国を、この世界を守ってみせると…それなのに…一体あなたはなんですか?!どうしてあなたのような無能のために父は自らを犠牲にしなければならなかったのか!でももういいのです。代わりの勇者を召喚しますから…あなたの命にかえて。」
「ま、待ってくれよそんなのあんたらの勝手な都合だろ!なのになんで俺が…ふざけんなよ…こっちの都合も考えずに勝手に呼んで勝手に犠牲になれだなんて…それに魔神はきっと倒せるさ…天城だって、橘達立っているじゃないか!」
「…それでも戦力は多いにこしたことはありません。それにもう召喚魔法は始まっていますから…動かないでくださいね?」
「ふざけるな!」
出口に向かって駆け出す。
「セバス」
「行かせませんよ?優くん。」
「どいてくれよ!セバスさん!あんたもグルだったのか?今まで俺に言ってきたことは全部嘘だったのかよ…強くなれるって言ったのも!」
「私の言葉に嘘偽りは一切ありませんよ?修行次第ではあなたは私を超える強さになるでしょう。」
「ならいいじゃないか!俺じゃなくても!きっと強くなってみせるから!」
「何年後ですか?」
「は?」
「それは何年後の話ですか?こちらには時間が無いのですよ。」
「そんなの…くそっ!」
「行かせませんよ?」
剣を抜いてセバスさんに切りかかる。
「迷いがある。甘いですね。やはり。」
ガキン!
くそ!このままじゃ…こうなったら。
俺は剣を拾い、王女の方に突っ込んだ。
「こいつを殺されたくなかったら俺を通せ!早くしろ!」
「…はぁー仕方ありませんね…優くん私の後ろにいる人たちに気づいていますか?」
後ろ?
「どういうこと…優くん?」
「何やってんだ藤山。その手を離すんだ。」
「藤山。てめぇ…」
「み、みんな…違うんだ…こいつらが俺を生け贄にしようとして…「助けてください勇者様!藤山様が私を殺そうとしているのです!」」
「まてよ!そんなわけないだろ…聞けよみんな。」
「王女様を離せ。藤山。」
天城が剣を構える。
「待ってくれよ…話を聞いてくれ…」
「優くん…離しなよ。」
「…違うんだなっちゃん。ここで離したら俺は…セバスさんに…」
「何が違うんですか?藤山様が私に剣を向けているのは事実でしょう?勇者様早くこの者を捕らえてください!」
「見損なったぞ藤山…はあ!」
「待ってくれよ天城!」
ズバン!
「があ!」
天城の剣が俺の肩に当たる。
「王女様!今のうちに!」
「ありがとうございます。」
「優くん…ごめんね。ファイアーボール!」
「…菜々!」
「ぐあぁ…熱い!やめてくれ!」
炎の玉が俺の顔辺りを包んだ。
「…どうしてこんなことしたの?どうして言ってくれなかったの?」
「…落ち着いて、菜々!まだ真実だと決まったわけじゃないのよ?!」
「由希、頼む、違うんだ。」
「…真実は私には決められない。ごめん藤山くん。」
「そんな…。」
「今です!召喚魔法!」
気づくと俺は祭壇の上にいた。
「しまっ…くそっ!なぁ頼むよ!助けてくれ…俺が悪かったから…嫌だ…死にたくない!」
皆は俺を蔑む目で見ていた。
そうか…そうだよな…何もかも弱い俺が悪いのか…俺が…無能だから…
ははは…なんか笑えてくるな。
「…覚えてろよてめぇら。死んでも俺らはお前達に復讐してやるからな。」
「負け犬遠吠えですか…見苦しいですね。」
部屋が明るく輝き俺の意識が閉ざされていく。
…神様…クソ喰らえ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます