ダンジョン・アタッカーズ!

Enju

迷宮と冒険者

――かつて、世界には無数の迷宮があった。

それは滅びし国の遺跡であり、古の魔神が封じられた洞窟であり、邪悪なる魔術師の住処であった。


迷宮は英雄を呼び、多くの英雄が迷宮に挑戦し、そして打ち勝っていった。その姿は物語として語られ続け、華やかな冒険譚はまた、新たな英雄となるべく人々を迷宮へと駆り立てていくのだった。


そして今。

多くの迷宮は守るべき主人を失い、その役目を終えたかと思われていた。

しかし迷宮は、主を失ってなお――或いは主を失った事すら知らず――未だ侵入者に牙を向く。


そんな迷宮に心惹かれた一部の冒険者たちは、幾度も幾度も迷宮を訪れてはその姿や仕組みに陶酔し……いつしか、迷宮の奥底を目指す行為は『ダンジョニング』と呼ばれる一種のスポーツとして確立し、そのダンジョニングに挑む冒険者たちの事は『ダンジョニスト』と呼ばれるようになった。


今や迷宮には宝はなく、打ち倒すべき悪もいない。

あるダンジョニストは、なぜダンジョンに潜るのかと聞かれてこう答えた。


「そこにダンジョンがあるからだ――」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る