きみとはじまるゼロ・ラウンド

作者 はとり

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★★★ Excellent!!!

恐がりすぎて、臆病すぎて、ナキムシすぎる。
でもそれがたまらなく愛らしくって、可愛がりたくなってしまう。

そんなアイリーンもといリリは、小さくて脆そうな白いたぬきちゃん。
優しく差し伸べられた手にすらなかなか信じることができず、恐々と窺うような視線がまた切なくて印象的でした。
寄り添おうにも爪を立てられ泣きじゃくられて……それでもそっと微笑むリーバくんの献身さがあるから、二人はこれからも優しく隣に並んで前へ進めるよね!


可愛い二人の小さなはじめての物語──まさにそう、ゼロ・ラウンド。

★★★ Excellent!!!

「The love story」

私はこの小説を読了した瞬間、この言葉が頭の中に浮かびました。
これほどまで恋を歌い上げた小説はないのでは、とすら思います。
まずは、この物語を書いて下さったはとりさんに感謝です。

古く、暗い、どこかの街で出会った二人の異種族。
半分たぬきで、半分が少女の、アイリーン。
森の民セイエスの、リーバ。

二人は街角で偶然出会い、そして多くの会話を交わすことなく惹かれ合う。
アイリーンは自分が獣であることを嫌い、別の存在になりたいと言う。
リーバは彼女の気持ちをじゅうぶんに知った上で、優しい嘘をつく。
心は時に離れ、時には大胆に近づいていく。
その距離感が、読者の鋭いひと息を吸わせる。

この物語の視点はアイリーンにあります。
そのためアイリーンの独白が主になるのですが、とにかく見事な筆致です。
恋する少女の心が、読者の心に忍びこんでくるのです。
愛で、愛で、いっぱいになります。
「しわぶいた」「戦慄」こんなマイナス要素の言葉ですら、ピュアな少女の前では誉め言葉になります。あなたは、アイリーンの心と同一になる。リーバへの想いがあふれる。あふれる。次々にあふれてくる。

恋する少女になろう。
涙も恥も滔々と流し、それでも恋しくて仕方のない心を感じてみよう。
そうしたら、あなた自身を愛する心もわいてくる。

今、あなたは半分たぬきで、半分が少女のアイリーン。
もふもふしっぽ、とってもキュートなアイリーン。
自分が自分であることを許せない、アイリーン。
そしてあなたの心の導火線に、誰かを愛する灯がともる。