家族編

Episode3 離婚

「ふわ〜あ……」

 眠い目を擦りながら、私は1階へ降りた。

「おはよう、幸奈」

「おはよう、お母さん。お父さんは?」

「そこにいるわ」

 見ると、お父さんはリビングで大の字になり、いびきをかいて寝ていた。

「良かった……。起きてなくて」

 ────お父さんは、アル中だ。家の酒が切れると、酒をよこせ、と暴れだす。

 まるで薬中やくちゅうの禁断症状のように。無いと言おうものなら、殴られ、蹴られる。顔だろうが身体だろうがお構いなしに。

 よく見ると、お母さんのほおが腫れている。

「お母さん、大丈夫?」

「えぇ。大丈……」

 その時だった。

 ────お父さんが起きたのだ。


「酒だ! 酒を出せ!!」

「あなた、お酒ならもう全部飲んでしまいましたよ」

「うるせぇ!! 買って来い! 女の分際ぶんざいで男に逆らってんじゃねぇぞ!」

 お父さんはお母さんの顔を叩いた。バシッという、鋭い音が響き、お母さんは頬を押さえた。

「何だその目は! 俺が悪いって言いたいのかよ!!」

「幸奈、逃げて! 早く!!」

 お父さんが怖くて、私はトイレに逃げ込み、鍵をかけた。


 トイレのドアがノックされる音で、私は目を覚ました。いつの間にか寝てしまったようだ。

「幸奈、開けて」

 私はドアを開けた。

 私は何も言わずにリビングへ戻っていくお母さんの後を追った。

 リビングは、ひどい有様ありさまだった。棚の中身が落ち、テレビが倒れ、物が散らかっていた。

「幸奈」

 お母さんに呼ばれ、私は我に返った。

「何?」

「よく聞いて。お父さんとお母さんは────離婚するの」

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