第9話
しばらくの間2人の間を沈黙が流れ続けた。
そして長い沈黙の末、実湖が口を開いた。
「世界から、能力を無くす?そんなことどうやって実現するの?能力を持っている人間を皆殺しにでもするの?」
「違う、そんな血が流れるやり方は絶対にしない。 血を流すのは、俺があの家を潰す時で最後にする。」
実湖が苛立ったように氷夜を見る。
「じゃあどうするの?そんなに都合良くはいかないでしょ。」
「儀式、だよ。」
「儀式?なんの?」
突然出てきた単語に実湖が首をかしげる。
「俺の家には代々受け継がれてきた儀式があるんだ。運命の神に祈りと血を捧げて、自分達の願いを叶えてもらうっていう感じのな。」
「その儀式を行う役は今年は俺だったんだよ。役は一度決めると変えられないからそれはまだ変更されていないと思う。」
「神の名はフォーチュナー、だ。」
氷夜の説明を聞き、実湖は怪訝な顔をする。
「ここに来て神頼み?その儀式はそこまで信用に足るものなの?」
「あぁ、その儀式で生まれたのが俺だから。」
「どういうこと?」
「俺の母親の代の願い事は時の能力を持つものを一族に加えて欲しい、というものだった。そして次の年、俺が生まれた。」
「成る程、信憑性は高い話だね。でも氷夜は家から逃げて来たのにどうやって儀式をするの?」
「儀式自体はごく単純なものなんだ、願いをつげる役が願いを言って、血を捧げる。それだけ。」
「血を捧げる、ね、それは願う役の血?それとも生贄?」
「基本的には一族の中から選ばれた人間たちの血を集めて人間一人分の量にしていたけど…一番いいのは願う役がそのまま捧げものになることらしい。」
「それならいい考えがある。」
「どういうことだ?」
実湖は薄く笑って言った。
「私を生贄に使えばいい。」
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