第7話
氷夜の姿が見えなくなり、向こうからも自分の姿が見えない距離まで来たことを確認すると実湖はその場に崩れるように膝をついた。
額からは脂汗が流れ落ちており、その息は荒い。震える手で服の内側に縫い付けておいた薬を取り出し飲み込む。暫くすると、呼吸も落ち着き汗も引いて来た。
クローンはもともと短命な上に実湖は特殊な能力持ちのクローンであるので他のクローンに輪を掛けて身体が弱かった。
といっても研究所では薬品入りの培養液に浸かった状態で過ごしていたので、そこまで危惧するほどではなかったが、研究所を抜け出して来た今は盗んで来た薬品しかなく、このままでは半年も生きられないだろうことは確実だった。
それは本人も自覚していた。
服の裏に縫い付けてある薬の数も残り9つしかない。
そして、先程氷夜に施した傷を治す行為も自分の寿命を犠牲にして傷を治しているので、それによる消費もあった。
もともと実湖は、氷夜の父である
他のクローンと違い、感情や自我のあった実湖は研究員に見つからないように氷河と連絡を取っていた。そして、氷河から自分はこれから処刑されるということ、息子の氷夜を逃がしてやってくれという最期のメッセージを受け取ってからそのためだけに動いていたのだ。
氷夜のことが直感的にわかったのも氷河に雰囲気が似ていたというのが大きい。
自分の命はもうすぐ終わろうとしているが、唯一、被検体である自分をクローンの1つではなく
それが実湖の唯一の行動理由であった。
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