第1話
激しく鳴る警報音の中を影が駆ける。
その影は前も見えぬほどの闇の中を風のように進む。
「被検体No.0835が脱走、直ちに捕獲せよ!
繰り返す、被検体No.0835が脱走、直ちに捕獲せよ!」
アナウンスから慌てたような声が聞こえる。
それすらも振り切り、私、被検体No.0835と呼ばれていたモノは走っていた。
私達はこの研究所で生み出された現存する人間たちのコピー、所謂クローンだった。
ここでは、将来有望になるであろう子供達のクローンを作りそれらを自分達の都合よく操れるように成長する段階で洗脳し道具にしようとしていたのだ。
私は少々特殊な個体であったらしく、自我や感情が元々備わっていたために自分がクローンである事、そして今後邪魔になればいつでも殺されるという事もわかっていた。
だから今日、身体の状態を確かめるために月に一度行われるチェックの時にあたり一帯を破壊してから逃げ出した。
他のクローン達も逃げられるように入り口を壊してはみたが大半は逃げるという事も知らないうちに捕縛されより厳重な設備に移されるだろう。
どうせクローンなんてこの研究所から出たら長くはもたないのだから。
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