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「たまには違うカクテルにしてみたらどうなのよ」

「いいじゃない、私メロンが好きなんだし、マスターのミドリスプモーニ、すごく美味しいんだから。あんただっていい歳なんだからお気に入りの一つくらい作ったらどうなのよ」

「えー、いいのこれで。その時のおすすめを作ってもらって、沢山美味しいカクテルを飲みたいんだもん」

「欲張りだね」

「探究心があるって言って」

 まるでコントのように続けられるお喋りについ頬が緩んでしまう。探究心があるとはユニークだ。サツキさんはきっと期間限定ものに弱いに違いない。

「そうなの、この子そう言うのにすごく弱くて」

 とヤヨイさんが答える。やっぱりね。

「ついその時にしか出会えないものに目が無くて。だってこの機会を逃せばもう出会えないかもしれないでしょ?」

「そうですね」

 白桃のシーズンだってそう長くはないもの。

「食事に行ってもなんでもそう、この子はいつもそう言うのを選ぶ」

「いいじゃない、世界は思っているよりも広いんだからね」

 フフン、と得意げに言ったサツキさんにヤヨイさんがフン、と鼻を鳴らす。

「でも男は一人しか知らなんでしょ?」

 なんて意地悪そうに言う。

「出会った頃、サツキは既に今の旦那の付き合っていてさ、正直驚いたもんね。新しいもの好きなサツキが、って!」

「いやいやそんなんじゃなくって、ただ偶然出会った期間限定ものと一緒になっただけかもしれないよ?」

「そんなことないでしょ、羨ましいねぇ」

 何て言って同じようにうっすらと赤くした顔を見合わせて笑う。そんな二人の違う所、それはサツキさんの薬指には指輪があって、ヤヨイさんは素敵なネイルをしていること。

「私も早くミドリスプモーニを見つけなきゃ」

「何それ」

 軽く笑ってサツキさんが言う。ヤヨイさんも小さく笑って「だから」と続けた。

「私だけの私が好きなもの」

「そうだね」

「そうだよ」

 二ィッと顔を見合わせて声を殺して肩を上下させる。

 その姿が本当に楽しそうで。いつまでも二人してオススメとミドリスプモーニを飲みに来てくれたらいいなと、そう思った。

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