芸術療法について

           『Art therapy(芸術療法)とは?』


一 人の心に眠る「表現する」「造形する」といった心理を利用し、患者(以下クライエント)の心理を無意識に引き出す心理療法の一種。カウンセリング(別名 心理療法)と芸術を組み合わせた治療法で、学校や精神科病院など適用範囲は広い。別名『アートセラピー』

 なおその技法は多種多様であるため、具体的な内容については後に明記する。


二 芸術療法の長所は何と言っても、ことだろう。通常のカウンセリング――相手の話を聞きその内容に応じた言葉を返す言語コミュニケーションが中心となる。

 しかし芸術療法は物を作り絵を描くなどのとなり、クライエントが自分の気持ちを言葉で上手く伝えられない場合に絶大な効果を発揮する。クライアント自身が新たな内面を知ることも多く、何より自分の素直な気持ちを表現することが出来ることが特徴。

 その結果心の奥底に眠っていた無意識を引き出せるきっかけにもつながり、それが問題解決に向け大きな動力源となることも多い。さらにと呼ばれる、心の浄化作用をもたらすことが多いのも魅力の一つ。


三 【二】といった長所がある一方で、芸術療法を治療やカウンセリングで取り入れる上における注意点もある。

 一つめの注意点――(カウンセラー)となる。クライエントの内面を引き出す技法でもあるため、信頼関係が構築されていない状態で行うと、むしろ逆効果になってしまう。

 意外と忘れられがちなポイントとして、多くの知識を得ることが一番重要なのではない。クライエントといち早く信頼関係を構築することが、治療における最重要課題。先に他の手法や技法を使い信頼関係を築きあげた上で、この芸術療法を取り入れるのが望ましい。

 そして二つめの注意点――クライエントが描いた絵や作品を、こと。あくまでも治療という概念で行われるということを、臨床心理士を志す者なら忘れてはならない。学校で良い成績を収める・コンテストで優秀な成果を挙げる――といったことが目的ではない。

 繰り返しになるが、クライエントの内面を上手く引き出すことが芸術療法の最終目的。よって一個人の判断による技術的評価は、絶対に行ってはならない。それがクライエントを傷つけるきっかけへとつながり、より心の傷が悪化する可能性も懸念されている。もちろんクライアントに治療を無理強いすることなど、もってのほかだ。


四 芸術療法はただクライエントに好きな作品を作ってもらえれば良いわけでもなく、出来上がった物を臨床心理士が評価する必要がある。事前にクライエントの好みや性格はもちろんのこと、手の動きや体の仕草などによる微妙な変化も見逃してはならない。

 この【二】の注意点を踏まえつつも、クライエントの内面を見いだすという臨床心理士の鋭い観察力・洞察力が問われる技法でもある。

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