サンフィールド一家との約束

 フランス パリ ホテル内のレストラン 二〇一一年七月二九日 午後七時〇〇分

 その後もしばらくエリノアの将来の夢についての話が続いたところで、ソフィーがある提案を持ちかける。

「そうだわ、エリー。もしあなたさえよかったら何だけど――仮にエリーがアメリカの大学へ留学することになったら、私たちの家で一緒に住まない?」

「そ、それってつまり――しても良いということですか!?」

「まぁ、堅苦しい言い方をすればそうなるわね――あなた、トム。二人もそれでいいわよね?」


 エリノアの優しさや純粋さに心魅かれたのか、勝手に話を進めてしまったソフィー。だがその気持ちはどうやらリースとトーマスも同じようで、二人ともソフィーの意見に賛成。

「……うん、僕は別に構わないよ。むしろエリーみたいな可愛い子なら、僕も大歓迎だよ」

「エリー、絶対にアメリカの大学に留学してね。そしてパパとママと僕の三人と一緒に、ポートランドで楽しく暮らそう!」

 気持ちをオブラートに包まず率直な言葉で伝えたためか、嬉しさのあまり軽く涙ぐんでしまうエリノア。そんな彼らの提案を断る理由などどこにもなく、むしろ“絶対にアメリカの大学にへ留学するわ”という決意がより強くなったようだ。

「……リース、ソフィー、そしてトム。本当にありがとうございます。絶対アメリカへの留学目指して受験に合格するので、結果を楽しみにしてくださいね!」

「これで決まりだね――あっ、そういえばまだ僕らの住所を教えていなかったね。ちょっと待って」


 そう言いながらリースはジャケットの内ポケットから一枚の名刺を取り出し、事前に用意していたボールペンで裏面に住所を書き込む。

「はい、どうぞ。名刺の裏に僕らの住所と家の連絡先を残しておいたから、家に帰ったら確認してね」

「は、はい。ありがとうございます」


 半信半疑になりながらも、彼らの連絡先が書かれた名刺を受け取るエリノア。だが万が一番号が間違っていたことを考慮して、早速名刺に書かれている電話番号へ連絡を試みる。

 すると間もなくリースの携帯の着信音が聞こえ始め、とっさに電話に出る。その声を確認したエリノアは、

「良かった、この番号間違っていなかったんですね」

と笑顔を見せながら電話を切った。

「と、とにかく明日の午後以降はしばらく会えなくなるけど、何かあったらいつでも連絡して。どんな些細なことでも構わないよ」

エリノアの態度にどこか呆れながらも、いつでも連絡して欲しいと伝えるリース。

「フランスとアメリカの時差の関係上、すぐに返せないこともあるかもしれないわ。でも出来るだけ早くかけ直すから、その点はよろしくね。エリー」

「絶対また会おうね、エリー。出来れば今度はフランスではなく――僕のお家がいいな」

「みんな……本当にありがとうございます!」


 和気あいあいとしたムードに包まれながらも、エリノアはトーマスたちと一生に残る想い出を心に刻む。

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