(前編) 和やかなムードに包まれて
シアトルで初めてのホームパーティー
二章
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一五年七月二四日 午後七時〇〇分
今日もハリソン夫妻の自宅では、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。この日は香澄たちが親友のエリノアを自宅へと招き、久々のホームパーティーを満喫している。また先日シアトルへ戻ってきたばかりのマーガレットも、急遽このパーティーに参加することになった。
「――というわけなのよ。年内はシアトルにいる予定だから、今後も何かを顔を合わせることが多いと思うわ。その時はよろしくね、エリー」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。でも香澄やジェニーからお話を聞いた時から不思議に思っていたんですけど、マーガレット――じゃなくて、ペグって本当に舞台女優だったんですね。何だか私、緊張してしまいます」
「そんなことないわよ。舞台女優ってエリーが思っているほど大層なものじゃないから、そんなにかしこまらないで」
エリノアとは今日が初対面となるマーガレットだが、持ち前の明るさで難なくコミュニケーションを取っている。その姿はまさに、数年前にマーガレットとジェニファーが出会ったころを連想させる。
「良かったですね、香澄。エリーとマギーの二人が仲良くしてくれて」
「えぇ。あの誰とでもすぐ打ち解けられるメグの性格、私にはとても真似出来ないわ」
お互いに紙コップに注がれたレモネードを口にしながら、世間話を楽しむ香澄とジェニファー。普段は何かと忙しい二人も、この時ばかりは羽目を外している。
するとそこへエプロン姿のフローラがやってきて、この日のために作ってくれた料理を次々と持ってくる。
「みんな、お待たせ! この日のために、私も腕をふるってみたのよ。おかわりもあるから、遠慮しないでたくさん食べてね」
香澄たちのためにフローラが作ってくれた料理は、どれも美味しそうだ。その中でも一口サイズの品が多く、フローラ特製のグラタンやシーフードサラダなど、彼女なりに栄養バランスにも気を配ってくれた模様。
「劇団が用意してくれるお弁当もいいけど、やっぱり私はフローラの作ってくれるお料理が一番好きかな」
「ありがとう、メグ。ほら、あなたの好きなフランスパンを取ってあげるわ」
どこかほくそ笑みながらも、フローラは自分でカットしたフランスパンをマーガレットの料理皿へ盛り付ける。
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