個人面談

「清水さん、そして、その叔母様、本日はよろしくお願いします。」


 担任の大友は、いつもとは違って冷静な話し方だ。逆に、そっちの方が緊張するじゃんか。私は複雑な表情をした。


「清水さんの進路ですが、R大学への進学ということでよろしかったでしょうか?」

「はい。その通りです。」

「叔母様も、深青さんからそのことは聞いてますか?」

「はい。お聞きしていました。」

「ふぅ。」

「先生、どうかしたんですか?」

「いや、違うんです。たまに、今回初めて聞いたよって驚く親御さんもいるので。」

「そんな子もいるんですね・・・」


 私は一瞬で「夏乃だな」と勘付いた。だから、あんなに面談が長引いたんだ。


「それでは、生活面の方のお話をさせていただきますね。とはいえ、清水さんは学力の方も、生活の方も、特にこちらから何か言うということはないんですけど。叔母様は何か気になっていることとかありませんか?」

「私も特にありません。ちゃんと合格してほしい、くらいですかね。」

「私も同感です。担任としても、深青さんのような生徒がいることは非常にありがたいです。」

「まあ、そんなことを言っていただけるなんて。」

「お世辞なんかじゃありませんよ。」


 私は二人の社交辞令合戦を隣で黙って聞いていた。その時間は、あまりにも退屈だった。


「最後に、深青さんから夏休みの抱負をひと言お願いします。」

「えっ!?」


 私は思わず口を押さえた。叔母はすかさず私に忠告する。


「唯一ダメなところは、そこかな。たまに、ぼーっとしてるところ。」

「ごめんなさい。」

「まあ、無理に言わなくていいからね。」


 担任は私に対して優しい口調で語りかけた。


「・・・私の夏の抱負は、とにかく勉強すること、ですかね。」

「そうか。じゃあ、勉強頑張ってな。」

「はい!」

「それでは、夏の面談はこれで終わりです。もし何かあったら、いつでも学校に電話するか、相談に来てくださいね。ありがとうございました。」

「こちらこそ、ありがとうございました。」


 私は叔母とともに教室を後にした。その後、すぐに私は叔母と別れ、また自習室に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る