銀色の物語
ドーナツパンダ
第一話「夢を見た黒狼」
黒狼の銀はS級ハンターとして、魔界中でとても有名な人物だ。
小さい頃からよく見る夢。
幼い女の子が泣く泣く姿をある男性が体ごとで優しく包み込む切ない夢。
(だ…誰なんだ?)
いつも夢から覚めると、泣いていた。
胸の中がチクチクして、心が押しつぶされそうな感じで痛かった。
チュンチュンと小鳥が鳴く涼しげで霧が多い今朝だ。
「もう朝か…。そろそろ妖怪を捕まえに行かないとな!」
ダダッと速足で移動してると、黒い影が後をついているのに気がついた。
「まさか…またあの連中か!?」
太くて濃い茶色の柄を持つ銀色の両刀をスッと綺麗に円状に曲がるように黒い影を消すことができた。黒い顔に多少赤黒い血の跡が散らばったが、スッと顔から消した。
「クッ…」
血がドタバタと流れる。
「ふっヤバい…な」
視線がどんどんぼやけていく。
「銀!銀!!」
「え…母さん?」
目が覚めると家の中にいた。気がつくと上半身は血の染まった包帯で巻かれている。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「銀。あんたには婚約者がいるんだから、気をつけなさい」
毎回大怪我するたびに言われる言葉だ。
だがもう慣れている。
「あのさ、母さん」
「ん?なに?」
「俺の婚約者って…誰?」
「人間の原田天満さん。今の年齢だと、15歳ね。中学三年生よ」
「そう。俺とは…?9歳差?ってこと?」
「そうよ。あの子のこと、ちゃんと守りなさい。黒狼の銀様?」
優しく微笑む母を見た銀の心の中はホカホカだった。
「原田天満か…」
彼女の名前を呟くように呼んだ。
(キラキラとした名前だ。きっと優しい心を持つ子だな)
久々に心が温まる優しい夜を過ごせた。
キラキラと照らす星の数々が子守歌のように魔界の夜を包み込む。
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