第十二話 目覚め

 さてどうしようか考える。


 体調が悪かったのも収まって来たし、まずは同級生達に合わないで、逃げる算段をしないとダメだな。

 立花たちは当然として、ひとみにも会いたくないなな。最後に、あんな態度取ってしまったからな。謝りたいけど今更だろうな。


 和葉に会って、なんで”あんな”行動に出たのか、聞きたい。


 それにマヤだ!マヤが、同級生だったらどうしよう。


 マヤが出てくるまで時間が有るし、今のうちに、スキルの確認をしておこう。


真命:神埼凛(1)

ジョブ:動物使い

体力:80

魔力:80

腕力:70

敏捷性:50

魅力:190(+250)

魔法:外(2)

スキル:隠蔽(1)、言語理解、念話(1)

ユニークスキル:動物との会話(1)(隠蔽)

エクストラスキル:万物鑑定(1)(隠蔽)


 しっかり隠蔽はされているようだ。真命を変えられるか、隠蔽できれば完璧なんだけどな。


 このままでは、いくら、隠蔽していても、名前を見られたら、すぐにバレてしまう。


 さて、ステータスを開いて、真命に集中して”隠蔽”。

 真命が、入力状態になる。


”リン=フリークス・マノーラ”


 こんな感じでどうだ!”リン”だけだと、疑われやすそうだな。何か適当につけたほうがいいだろうな。真命だし、テルメンは使わないほうがいいだろうな。そうだ、ゲートの中で話しかけてきた神は親しみやすかったし丁度いいかな。


 フリークスは、オフクロの結婚前の姓だと聞いた記憶がある。何か、問題があれば、書き換えればいい。


 隠蔽に、こんな使い方が有ったなんて、スキルには、他にも説明にない隠された機能が、有るのかも知れない。


 これで、同級生とすれ違っても大丈夫・・・だよな。

 鑑定持ちとかに、鑑定して見てもらいたいな。


 まずは、普通に、触られてのステータス確認ができるのかだな。マヤと合流すれば、マヤに見てもらえばいい。


 周りをキョロキョロ確認してみたが、さっきまで、同じように苦しんでいた女の子は、もう出ていったようで、姿が見えない。周りを確認してから、出口に向かって歩く。さっときとは違う人なのだろうが、法衣を着ている人が話しかけてきた。


「スキルで解らない事や、ジョブで解らないことがあれば聞いてください」

「大丈夫です。でも、申告しなくてはダメなのですか?」

「大丈夫ですよ。もし、解らない事が後で出てきたら、各地にある神殿でも聞けるので、困った事があったら、神殿で聞いてください」


 スキルで解らない事があったりジョブでわからなければ、聞いて欲しいと言う話だった。


「スキルの事ではないのですが、教えていただく事はできますか?」

「なんでしょうか?」

「先程、パシリカを受けた時に、札を持ってくるのを、忘れたのですが、問題なかったのでしょうか?」

「はい。大丈夫です」

「それは良かった。あの札は何だったのでしょうか?」

「あの札は、パシリカを受けた証明に使われる物です。村によっては、パシリカの費用が、捻出できないなどの理由で、受けさせない場合があります。あの札で、今年パシリカを受けた子供の人数を把握しているのです」

「そうなのですか?あの札には何が刻まれるのでしょうか?」

「名簿上に乗っている名前になります。受付時に確認された名前と、ステータスで見ることが、出来るスキルが刻まれます」

「ありがとうございます。あと、パシリカを受けたときに、頭痛に襲われましたが、皆そのような事になるのですか?」

「多くはありませんが、スキルを得たことによって、頭痛に襲われる事が有るようです」

「そうなのですね。僕だけじゃないと解って、ホッとしました。ありがとうございます」


 礼を言って神官の前から立ち去る。

 札には、名前とスキルが刻まれると言う事だ。隠蔽してある物は札には出ていないとおもう。もし、でていたら多分あの法衣を着た男が、対応して、別の場所に連れて行くのだろう。


 部屋を出て城門に向かおう。マヤとそこで待ち合わせをしていたからな。

 ほんの数分前だけど、すごく昔のように感じるな。白い部屋の中での事は、13年前だけどついさっきの様に思い出す。


 城門を出ようとした時に、フェムと名乗っ女の子がウロウロしていた。誰かを探している様子だ。

 横を通り抜けようとした時に、肩が触れた。わざと、こっちに寄せた感じがした。


 瞬間的に、ステータスを確認してしまった。


真命:重久真由(1)

ジョブ:氷術師

体力:180

魔力:320

腕力:90

敏捷性:120

魅力:60

魔法:黒魔法(1)

スキル:隠蔽(隠蔽)、詠唱破棄(隠蔽)

ユニークスキル:属性無視(隠蔽)


 重久!?


「ゴメンなさい」


 重久は頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。自分が、転生者だとばれることもいとわないで、やっているとしか思えない。

 雰囲気として、俺を待っていた感じがするが、気のせいだろう。


「いえ。大丈夫です?大丈夫ですか?」

「えぇ大丈夫です。たしか・・・リン、だよね。今日の夕飯も来てくれるんだよね?」

「そのつもりだけど、妹と話してからだけどね」

「わかった、ご来店お待ちしています」


 やはり、重久は誰かを探しているのだろう。ひとみだろうか?


 今晩の夕飯を、どうするか考える必要がありそうだな。

 それにしても、真命を変更しておいてよかった。重久は、俺の事を”凛”だと認識できなかったようだから、真命の変更がうまくできていると思って大丈夫なのだろう。

 隠蔽を隠蔽していなかったのはまずかったかな?

 感のいい奴なら何か隠蔽していると考えるだろう。今からでも遅くない。隠蔽を隠蔽しておこう。


 城門を出て、マヤを待つことにした。

 重久のスキルを思い出す。詠唱破棄とか、属性無視とか、チートっぽい物が着いていたな。そういえば、自分のスキルに関しても解らない事が多かったな。


 近くに落ちていた石を拾って、『鑑定』と念じてみた

名前:石

価値:1


 それだけが表示された。

 価値が表示されている。でも、1って石が売れるとは思えない。何か法則性があるのかもしれない。


 そうだ!

 マジックポーチの中を確認するのに役立つかもしれない。街中で出すわけにもいかない。胸の所にあるポーチに触れながら鑑定を行った

名前:魔法の袋マジックポーチ

価値:100,000,000,000

内容:300アイテム/999個


 はぁ?

 価値が、意味の解らない数字になっている。10兆?意味が、解らない。とりあえず見なかったことにしよう。


 中に入るアイテム数と個数が解った。意外と鑑定は使える奴だな。

 中身の鑑定は宿に戻ってからにしよう。


 マヤはまだかな?

 城門の受付にも、パシリカを受ける子供が並んできている。


 早い時間に来て正解だったな。


 その時、背後からすごい勢いで、誰かが抱きついてきた。柔らかいものが、背中に押し付けられた。


 とっさに鑑定をしてしまった。


真命:マヤ・アルセイド(1)

ジョブ:森魔法師

体力:160

魔力:1200

腕力:80

敏捷性:450

魅力:220

魔法:黄魔法(2)、黒魔法(1)、青魔法(1)

スキル:鑑定、念話

エクストラスキル:?????(隠蔽)(1)


 マヤだった。マヤは、マヤだった同級生じゃなかった


 それにしても、マヤのくせに、チートキャラなのか?

 魔力がチート能力を持った、重久の約4倍ってどういうことなんだよ。念話が使えるから、内緒話には便利かもしれな。気になるのは、エクストラスキルがあることだが、隠蔽されている。

 マヤのスキルには隠蔽はない。隠蔽を、隠蔽していても、鑑定で見る事が出来るはずだ。隠蔽されている事も気になるが、それよりも、スキルが?????になっていることが気になる。単純な隠蔽なら、名前が出て”隠蔽”と、表示されるはずだ。


マヤのエクストラスキルの?????に集中した。

『?????を鑑定しますか?(Yes/No)』

 と、出てきた。迷わず”Yes”を、選択する。


『?????は、鑑定出来ません。上位者によりスキルがロックされています』

 と、説明が出てきた。これから解る事は、マヤのスキルは、何者かによってロックされている。そして、他人のスキルをいじるスキルが存在する事。俺の鑑定が万能ではないことが解った。


「リン。どうしたの?」

「ううん。マヤがすごいなって思っただけだよ」

「あぁぁぁ私のステータス見たんだ!エッチ」

「エッチってマヤが、急に、抱きつかれたらびっくりして、誰なのか確認しただけだよ」

「言い訳だね。リン。私の事を、知りたくて見たんでしょ」

「あのねぇ一緒に育ったんだよ。マヤのことは隅々までしっているよ。どこにほくろがあるかとか、おねしょ何歳までしていたかとかね」

「やっぱり、エッチだ。私のこと観察していたんだね」

「・・・・」


「「ハハハ」」

 二人して笑いだしてしまった。


「ねぇリン。私ってすごくない!?神官の人がびっくりしていたよ」

「そうなんだ。なんて言われたの?」

「う~ん。忘れちゃった。なんか、魔力が多いからすごい魔法師になるって言われた!」

「そうだね。僕は平均的だから、マヤが羨ましいよ」

「えっへん。これからは、マヤ様って呼びなさい。そうしたら、リンを一生守ってあげるからね」

「はいはい。マヤ様。それじゃ、僕とマヤは、一生一緒に、居るんだね」

「もちろん!!!」


 そう言って、マヤは僕の腕に抱きついてきた。そして、少し顔を赤くして

「宿に戻ろう。どうするか決めないとね」

「そうだね」


 マヤに手をひかれながら、朝の夢モーニングドリームに向う事にした。

 宿に着いて、マヤと二人っきりになって、いろいろ話をしようと思った。異世界の両親と、マヤが、僕の味方になってくれる。だからこそ、自分が、転生者である事は言わないにしても、マヤには隠し事は少なくしたい。


「・・・・」

「リン。どうしたの?」

「・・・・」

 何から話して良いのか解らない。


「リン。あのね。ゴメン。これ読んじゃった」

 そう言って、くしゃくしゃになっている紙片を出してきた。見間違えるハズがない、馬鹿が書いた物だった。


「・・・・・」

「リン。私、知っていたよ。リンと本当の兄妹じゃないって事」

「!!」

「リンが、そのことを知らないと思って黙っていたんだ。ゴメン」

「・・・いや、僕も、マヤが知らないと思っていた」

「お互い様だね」

「そうだね」

「リン。それで、パパが書いている、子供を作るって....どういう事?」

「あっそれは・・・。ニノサが勝手に思っている事で・・・で・・・「リンは嫌なの?」」


 真正面からマヤが見つめてきている。

 本当に可愛い。正直に、言えばすごく好みだ。神崎凛の記憶を取り戻して、余計に、マヤが可愛く見える。


「そんな事ない。でも」

「でも?何?私はリンなら嬉しいよ」

「!!」

「マヤ」

「うん。リンは気がついていなかったかもしれないけど、私が好きなのはリンだけだよ」


 真っ赤になって、うつむいてしまったマヤを抱きしめる。

 どうしたらいいのか解らない。解らない・・・。でも、すごく嬉しい事には違いは無い。


 マヤを見つめ返す。マヤは、目をつぶった。

 どうしたらいいのか、わかる。わかるけど、わかるだけに、わかる。


 自分が、何を考えているのかわからなくなってきた。

 マヤは、妹。妹だけど、妹じゃない。僕の、リン=フリークス・テルメンの大切な女の子だ。神崎凛として、僕は、マヤを離したくない。


「マヤ。僕も好きだよ」


 唇を合わせるような優しいキスをした。

 そして、マヤを強く抱きしめた。


 どのくらいの時間が経ったのか解らない。


 マヤが、真っ赤な耳のまま、僕を見つめる。僕も、多分、真っ赤になっているのだろう。でも、マヤが好きだという気持ちに嘘は無い。これが、リン=フリークス・テルメンの気持ちなのか、神崎凛の気持ちなのかは解らない。でも、僕は確かに、マヤが好きだ。


 そのまま、マヤを見つめていた。なぜだか、おかしくなって、二人で笑いだしてしまった。


「マヤ。これからもよろしくね」

「もちろんだよ。お兄ちゃん」

 もう一度唇が触れるだけのキスをした。


「そうだ、マヤ。僕のスキルを見てほしいんだけど」

「うん」


 抱きついたまま、ステータスを見るようにお願いした。

「見れたよ」

「覚えてくれた?」

「うん。動物使いって珍しいジョブだね」


 隠蔽を、解除する。

「もう一度見て」

「うん.。え?!スキルが増えてる?」

「何が見える?」

「う~んと、念話って私が持っているスキルと同じ物があるよ」

「他には?」

「ううん」

「真命は?」

「”リン=フリークス・マノーラ”になっている」

「そうだよな」


 しっかり、書換ができている。


 念話を隠蔽に戻した。

「これから話す事は二人の秘密だからね。ニノサ達にも秘密だよ」

「うん。キスしたことも秘密にするよ!!」


 隠蔽というスキルを使うと、自分のスキルが変更できる事を説明した。


「ふぅ~ん。そうなんだね。でも、なんでそんな事をするの?」

「例えば、バカ領主や領主の息子に、僕たちが、有効なスキルを持っていると知られたりしたら面倒だろう?」

「う、うん」

「マヤの場合は、可愛いし、それで、魔法が使えるって解ったら、あの馬鹿の事だからね」

「あっえへ。でも、わかった。秘密にしておくね」


「マヤ。そうだ、念話の実験をしてみない?」

「実験」

「お互いに、念話を持っているから、もしかしたら、頭の中で、会話が出来るかもしれないだろ」

「あっそうか!でも、どうしたらいいのかな?」

「う~ん」


 取説みたいな物はないだろうな.....あ!鑑定したら出るんじゃないかな。

 ステータスを表示して、念話を鑑定した


名前:念話(隠蔽)

レベル:1

機能

 言葉ではなく意識レベルで会話をする事が出来る。

使い方

 初めての相手のときには、相手と接触しながら念話を行う必要がある。その後は、”念話”と、念じる事で会話可能な相手が表示される。範囲外にいる場合には、選択できない状態になる。


 ふむなんとなくわかった。

「マヤ。手を握ろう」

「??」

「ほら!」


 少し強引に、マヤの手を握った。握った状態で”念話”と念じた。


『『!!』』

 携帯電話みたいに呼び出し音があるわけじゃなくていきなり繋がった。繋がった事は解った。


『マヤ?』

『リン?』

 出来たようだ。


『不思議な感じだね。話していないのに、リンと会話が出来る』

『そうだね』


 そこで手を離したら、念話が切れた事が解った。


「あっ手を離したらダメなんだね」

「最初だけらしいよ。マヤ、今度は念話と念じてみて」

「うん。あ!!リンの名前がある」

「選んでみて」

「うん」


『念話:マヤ・アルセイドからのコールです』

 念話と念じると、通話が繋がったような感じがした。

 念話は、真命で繋がるのか?


『リン』

『繋がったね。こうなるんだね』

『会話を終わるにはどうしたらいいの?このままなの?』

『どうなんだろう?』

『えぇ困るな。頭で考えた事が全部リンにばれちゃうんでしょ。恥ずかしいよ』

『恥ずかしい事を考えているの?』

『そんな事ないけど・・・やっぱりダメ』

『もう一回念話と念じると切れるみたいだよ』

『やってみる』


「あっ切れたみたいだね。良かった(そうしないと、抱きつきたい時とか好きって思った時とかバレちゃう。リンに触りたいって思ったり、またキスして欲しいって思ったり)」

「いろいろ使えそうだね。そう言えば、マヤ。念話で僕の名前は、なんて出ていたの?」

「ん?”リン=フリークス・マノーラ”だよ」


 へぇよくできているな。書き換えた、真命で繋がるのなら安心できそうだな。


 これで、何か有ったときにはマヤにだけ聞こえるように話す事が出来る。

 逃げる時とかでも、バラバラになる前に待ち合わせ場所を決める事ができそうだな。


「ねぇリン。お腹減った」

「はいはい。お嬢様。昨日と同じでいいよね?」

「うん。夜の蝶だよね。美味しかった!!」

「了解だよ。それじゃ行きましょかね。お嬢様」


 魔法の確認は、”ここ”ではできそうにないし、マジックポーチの中身も、夜やればいいか、それに二人でやればいいか。


 マヤと宿屋を出て、道を挟んだ夜の蝶に向かった。

 そんなに暗くなる前だったからか、客は一人も居なかった。店は空いているようなので、店の中に入って適当に空いている席に座った。

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