あれを


あれを

盗んだ

あれを

半年間、探して

やっと見つけた

おれは狂喜した

そしてマーガリンに腕ごと突っ込んだ

狂った

そんな解釈をされても文句は言えなかった

だがおれは正常だ

ただあれを手に入れてしまっただけ

正常すぎて頭がおかしく見えることはきっとよくあることだろう

あれを

盗んだ

金ではけして買えないものだった

「防犯カメラには映っていないのか?」

「防犯カメラは壊されたみたいですね」

「防犯カメラを壊したのは一体どいつなんだ?」

「防犯カメラには映っていないですね」

「じゃあ次からは防犯カメラを監視するための防犯カメラを設置しなくてはならないではないか」

そのような会話が成された

あれは

盗んだ

今はおれの手の中にある

未来は薔薇色だ

「ところで結局あれってなんなのさ?」

きみは言った

そんなことはどうでもいいじゃん

そう思わないか?

泳ぎに行こうぜ

あの誰も見当たらない地平線の彼方まで続いている真っ青な海を


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