もう一人の自分


「ふざけるな」

「ふざけるな」

「おれの真似するんじゃねえ」

「おれの真似するんじゃねえ」

「それをやめろ」

「それをやめろ」

「だから真似をするんじゃねえ」

「真似をしてるのはあんただ」

「おれのが先に言ってる」

「じゃあなんであんたはおれの言おうとしてることを先に言っちまうんだよ」

「何? なんだって? お前の言おうとしてることをおれが先に言ってるだって?」

「そうだよ、あんたは酷いよ、なんせおれが言おうとしてることを横取りしちまうんだからさ」

「そんなバカな話しがあるか」

「ほらまた盗んだ、それはおれがちょうどこれから言おうとしてた言葉さ」

「………」

「………」

おれは黙った

そいつも黙った

「あーもう面倒くせえ」

おれは殺すことにした

「あーもう面倒くせえ」

そいつも言った

そして取り出した刃物が二人の胸に同時に突き刺さった

おかしいではないか

これまでの話しによるとおれの方が先に着くはずだった

こいつそれに気付いて早く動きやがった

はは

おれは笑った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る