疑惑


砂漠を歩いていた

一面、灰色だった

空も人も何もかも

自分の手首を見た

やはり灰色だった

おそらく瞳の色もそうだろう

そして列があった

自分はその列に所属していた

その後方に属していた

わたしは急に意識が戻ったように

ふと思った

わたしは何をしているのだろう?

その次に思ったことに驚いた

敵は何処にいるのだろう?

敵?

敵だって?

自分の肩からは物々しい銃器がぶら下がっている

それが歩みに合わせて前後に揺れた

わたしは誰かを殺しに行く最中なのだろうか?

………だとしたら誰を?

まるで思い出せなかった

記憶

それがすっぽりと抜け落ちていた

わたしは既にこれが夢ではなく現実であると信じ切っていた

無理もない

この感じ、これは現実と呼ぶ以外、形容、出来ないものだったからだ

突然、何もかもが異常なことのように思えてきた

だが表情には出さずに尚、歩き続けた

恐怖が全身を駆け巡って逃げ出す穴を求めていた

ここはやばい

わたしは辺りを見回した

わたしのすぐ前を歩いていた人間が初めてこちらを振り返った

わたしは銃器に手を掛けそっと引き金に指を添えた


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