最弱の僕が気づいたら最強に祭り上げられてたけど、頑張って現実にしてみせる

小暮悠斗

SeasonⅠ

入学篇

Prologue

 趣味なし。

 特技なし。

 成績も平凡――中の中。

 ありきたりで平凡な男。

 それが僕――皆月冬夜みなつきとうやである。


 名前も気に入っていないわけではない。だがしかし、これといってインパクトのない僕は、せめて名前だけはインパクトのあるものでもよかったのではないか? と思わずにはいられない。

 西園寺とか道明寺みたいな名家っぽい名前に憧れを持つ。西園寺や道明寺が名家なのかは知らないけど……。


 それでも平凡というレールに乗っている僕は、このまま何事もなく人生をそれなりに楽しく過ごしてゆくものだと思っていた。

 

 あの時までは……


 平凡であったはずの僕は、高校受験に失敗。

 どこの学校も試験が終わり、高校浪人を覚悟していた僕の下に、父が街中で拾ったというパンフレットを持ってきた。筆記試験不要、書類提出のみというかなり緩い審査で入れる高校。もちろん名前も聞かない無名校だった。

 行くあてのない僕は、わらにもすがる思いで書類を提出。数日後、合格通知が届き、晴れて高校生になった――なることができた。



 そして僕は高校の入学式に出席するためにバスに揺られていた。

 私立怪奇かいき学園。それがこれから僕の通う学校の名前だ。

 名前からして怪しいことこの上ない。


 こんな場所N県にあったか?

 地元ではないとはいえ隣県のことは多少は知っているつもりだ。

 こんな場所は知らない。それになんだか空気も重い気がする。淀んでいると言えばいいのか、不穏な空気と言うべきか……

 生い茂る木々が一層不気味さに拍車をかけていた。

 バスは深くなりつつある霧の中を突き進む。

 前方にトンネルがうっすらと見えてきた。

 すると、


「……お客さん、怪奇学園に入学する生徒さん?」


 バスの運転手が声を掛けてくる。

 僕は「はい」と短く答えた。

 ヒヒヒ、と息を吸い込むように笑うと運転手は、


「覚悟しないといけないよぉ……」

「えっ!!?」

「ヒヒヒ。このトンネルを抜けるとすぐに学校だ……怪奇学園は恐ろしい学校だからねぇ~!!」


 運転手は不気味に笑っていた。

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