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 滅びの美学というものがある。我々は我々を滅ぼすものを愛することでしか生きられない。なぜならば人は人である以上必ず終わりがあって、人生とは敗北を定められた戦であるからだ。死を逃れようとのたうち回ることは見苦しいという他ない。本来武人の頂点としてその気概を体現すべきヘクトル、あの醜態を見よ。彼はもはやヘクトルと呼ぶにも値しない。

 不可思議なのはユリウス帝である。彼は何を恐れているのか。いや、何を諦めているのか。死から最も遠いはずの彼の立ち振る舞い、その全てに滅びの美学を見るのは私だけかもしれない。ただ間違いなく、彼の瞳はここにはないどこかのカタストロフを見つめている。

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