4#風船ウシ

 んも~~~~~!!


 ホルスタイン牛のポンポンは、この牧場名物の乳搾りたてソフトクリームの原料である乳をもたらすこの牧場では一番大活躍している仲間達だ。


 ソフトクリームの原料の乳を出すホルスタイン牛は他にも何頭も居るが、中でもポンポンが出す乳を原料にしたソフトクリームが、飛びっきり美味しいと大評判・・・らしい・・・と、ポンポン自身は思っている。


 

 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・



 ボかっ!!



 「いてっ!!誰・・・私に脚蹴りしてくるのは・・・あっ!!ポンポンさん!!」

 

 「なによ!!あたいの牧草勝手に食べないで!!ペチャパイ!!」


 「『ペチャパイ』ですって・・・あんたが牧草を独り占めしてるくせに・・・」


 「なんですって・・・」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・



 「す・・・すいません!!牧草あげます!!ポンポンさま!!」


 

 という具合で、自尊心が生れつき大きいホルスタイン牛のポンポン。

 そんなポンポンの乳は、『巨大風船』と呼ばれる位のパンパンに張った正に『ボイン』級だ。

 なので、どっちみちこの『巨大風船』乳のパンパンには他の乳牛には逆らえなかった。



 そんなホルスタイン牛のポンポンの、自尊心を挫くとんでもない事件が今起きるとは・・・



 ころん。



 「あれ?これは・・・ゴム風船・・・でもだいぶ縮んでる。」


 ホルスタイン牛のポンポンは、蹄で空気が抜けて少ししか膨らんでいない肌色の風船を転がした。


 ホルスタイン牛のポンポンは、何か思いついた。


 ・・・あたし・・・息入れて膨らませてみようかな・・・


 ポンポンは、縮んだ風船を口にくわえると、歯で風船の吹き口の結び目を何とか解いた。


 しゅ~。


 風船の空気が抜けた。


 「よーーーし!!風船を膨らませよう・・・」



 しかし、突然それは起こった。



 「ゲップ!!!!!!!」


 ホルスタイン牛のポンポンは、風船の吹き口をくわえたままゲップしたからたまらない。



 ぷぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 

 ゲップのメタンガスが、風船の中に流れこんで、ネックまで膨らんで洋ナシ状に大きく一気に膨らんだかと思うと・・・



 ばぁーーーーーーーーーーーん!!!!!



 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 口元で物凄い音を立ててパンクした風船に仰天したホルスタイン牛のポンポンは、厩舎内で飛び跳ねてしまった。



 

 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!

 

 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 んも~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!




 それに反応して他の牛達も暴れ、牛の世話掛りのスタッフも飛び出してくる大騒動になってしまった。


  んも~~~~~!!  


 「ねえ、ポンポンって・・・乳が『巨大風船』級に輪をかけて、肺活量も『巨大風船』級なのねえ!!風船もひと吹きでパンクさせちゃうんだから!!」


 「やだ~まじうける!!私なんか、風船じゃなくて頬っぺたのほうが膨らむわよ。」


 「って・・・あんた、風船を口で膨らませたことないに?」


 「そうだっけ?てへぺろ。」


 ほかの乳牛たちはひそひそ話に、入場者の乳絞り体験に駆り出されたポンポンは、自慢の『巨大風船乳』から子供に乳房を握られてながら呟いた。


 「やーね・・・これはあたいの肺活量ではなくて、『ゲップ』なのに・・・

 みんなは『ゲップ』しないのかしら?悪いタイミングで『ゲップ』出たもんよ・・・ああ運が悪い。運が悪い・・・んも~~~~。」



 

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