第7話 OKちゃんとNG君

 先輩が出て行った後、私はすぐに紙に目を再び向けていた。

 先に先輩が出したヒント。

 そこから私はあることを導き出していた。


『お前に

 この問題が解け

 るか? 精々頭を使って

 頑張れよ』



 改行により目立つのは――

 そこだけを抜き出す。


『お

 こ

 る

 頑』


 おこる頑?

 ひらがなに直しても『おこるが』だ。

 ……怒っているのはこっちだ。

 しかも何弁なのだろう、『おこるが』って。

 しかしながら、これは違うと直感で分かった。

 もしこれであれば先輩が先ほど言っていた「君が自身で解くことに意義がある」という言葉と反する、というか結びつかない。

 では、他の見方はどうだろうか?


 そこで真っ先に思い付いたのが――アルファベットだった。


『お

 こ

 る

 頑』


『O

 K

 R

 G』


 OKRG


「……これだ」


 謎は解けていないが解法はこれであると私は確信に至った。

 何故なら、単語に「OK」というものが入っていたからだ。

 先輩はこの部屋から去る時に、わざわざ私のことを「OKちゃん」と言っていた。

 先輩の性格からも、それは嫌味ではなく、これ自身もヒントだった、と考えるのが正しい。

 であれば、この四文字――『OKRG』が何を示すのか?

 後はそれを探すだけだ。

 そこについても先輩はヒントをくれていた。

 ……言うなれば、彼だってヒントを出していたのだ。


『PC室に行けば分かる』


 私は真っ先にブラウザを立ち上げ、『OKRG』と検索した。

 しかしながら、検索結果からは答えになりそうなものはなかった。


「……いや、待って」


 私はそこでとあることに気が付いた。


「そもそも、検索であれば今はスマートフォンや携帯電話でも出来るはずよね……?

 そこを、わざわざPC室を指定してくるということは……」


 瞬間、私の中で稲妻が走った。

 スマートフォンや携帯電話ではなく、このPC室にある身近なもの。

 言うなれば――PC室なら絶対にあるモノ。

 それは――


「――!」


 私は叫びながら手元にあるキーボードに目を向ける。

 そしてそこにある『O』『K』『R』『G』を注視して――



「……ッ!!」



 声にならない声を上げた。


 全てが繋がった。

 どうして彼が私を『OK』と呼ぶのか。

 どうして彼を『NG』と言ったら先輩が謎が解けたと思ったのか。

 そしてどうして先輩が――私自身がこの問題を解かなくていけないと言ったのか。


 顔が熱い。

 心が締め付けられる。

 でもそれは病気じゃない。

 苦しい痛みではない。


 心地よい、感情の揺さぶり。


「……はあ」


 熱を確かめるように頬に手を当てると、徐々に口角が上がってきているのを感じた。

 嬉しかったのだ。

 だって――


「……返事、しなきゃね」


 私は彼から渡された紙の後ろにペンを走らせる。

 それは彼が出した問題の対して、私が出した答え。

 真っ直ぐな答え。

 それを書き終え、私は大きく深呼吸する。


「さて……あいつになんて言ってやろうかな。解答はPC室にある、って言ってやろうかしら。ここまで散々振り回されたのだもの。これぐらいはやっていいわよね」


 ふふ、と笑い声をこぼし、OKは彼――『美樹NG』にどんな風に伝えようかと企みながら、浮足立った足でPC室を出て行った。

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