資格、なし。※ただし思春期症候群の経験あり
井守千尋
一次試験・履歴書
《メディアスキー・ワークス募集要項》
・20××年3月に大学、大学院、専門学校を卒業する学生に限ります。
・雷撃文庫を始めとした、さまざまなメディアの仕事に繋がります。
・一次試験は筆記、二次試験以降が面接となります。
・募集、若干名。
篠ノ井かなめは、凡庸な地方駅弁大学文学部の大学四年生である。趣味はライトノベルで、特に派手な経歴もなし。地元の市役所試験を本命に、東京にある「受けてみたい会社」をいくつかピックアップして就職活動を勧めていた。特に入りたいのがメディアスキー・ワークス。大手丸川書店のライトノベルレーベルである。特に雷撃文庫は全刊行数うち、1000冊以上を読破しており、自他ともに認めるラノベ好きだ。
とはいえ、入れるのはどうせ優秀な大学の学生ばかり、かなめはせめて記念受験のつもりで履歴書を提出することにした。
◎篠ノ井かなめ 19××年生まれ 22歳 男
20××年3月 水都高校普通科卒業
20××年3月 水都大学文学部卒業見込み
◎趣味
読書、映画鑑賞、旅行
◎特技
応援
◎資格
TOEIC 525点
ITパスポート
◎志望理由
私は幼い頃から本を読むのが好きで、人生の道標はいつも文庫本でした……(以下略)
◎あなたが専攻している学業内容について完結に説明してください。
(略)
◎学生時代に、学業以外に打ち込んだものはありますか
応援です。私は応援サークルに所属し、3年間に6人の応援をしました。どうして応援サークルに入ろうと……(以下略)
◎メディアスキー・ワークスで実現したい夢はありますか
読者の指針となってくれるような作品を世に送り出したいと思っています。メディアスキー・ワークスの特徴としてメディアミックスが(以下略)
◎備考
思春期症候群の経験あり。
5月某日、かなめは一通のメールを受け取る。「選考結果」とだけ書いてあったメールを今まで何通も開いては、お祈りいたしますという通知だったため、もう見たくないと薄目で開いた。
『メディアスキー・ワークス一次面接の案内』
「通った……。通った!!!」
放課後の、サークル話し合いでの一幕であったが面接の日時に懸念があった。5月22日、その日は応援サークルに依頼をしてきた2年生の女子・竜王たまきの応援日だからである。もちろん、就活優先で、憧れのメディアスキー・ワークスの面接だから行くが、もうひとりの部員、三保ナギだけではすこし心配だった。ナギには、「就活のため、リスケできないか?」と連絡をいれた。心配事はそれだけではない。メール文末に問題の一文が書き加えてあったからである。
『また、思春期症候群の方は、可能であればそれを証明してください』
「どうすっかなあ」
かなめは、メールを送ったばかりのナギに電話をかけた。
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