AMONG DAWN

春の夜

Episode1 再会

第一話 再会

「ミアちゃん、ジェシちゃん。私今から引っ越すの」

「嘘だろ?どこに行くんだ?」

「サラちゃん、急過ぎるよ?なんでもっと早く行ってくれなかったの?言ってくれてればパーティーでも開いたのに……」

「日本に引っ越すことになって……ごめんなさい。パーティーなんてしたら余計さみしくなるから」

「まあ引っ越ししちゃうのはしょうが無いな、元気でな」

「ねえ約束しよう?サラちゃんミアちゃん」

「何の約束だ?」

「決まってるじゃない!また3人で絶対集まろうって!」

「そりゃいい」

「そうだね。私たちはまたこの浜辺で集まろうね、約束」

「ああ、約束だ」

「ふふ、約束!」


 3人は朝焼けを映す自然の鏡の中で抱き合う。

 3人の顔は笑顔。細めた目からは水滴があふれ出し、自然の鏡の面に波紋を作る。


「じゃあ、行くね」

「またねサラちゃん」

「じゃあな、サラ」 


 浜辺を去る時、背中で2人の視線をしっかりと感じ取る。

 そう、またいつか。この場所で――



 ***



 揺れる車の中、ふと10年前のことを思い出す。懐かしい記憶、悲しくさみしい記憶。あの別れ際の言葉は頭の中で鮮明に再生された。

 次に頭は再会の言葉を考え始める。

「やあミア、ジェシ。また会えたね?」

これはなんか鬱陶しい。

「ミア!ジェシ!ひっさしぶり!!」

元気すぎるのもアレか……。

 こういうときの適切な言い方はどう言うのだろう。スマホで『久々の再会 適切な言葉』を検索してみる。

 うん、変なサイトへの誘導ばっか。しかも出会い系に誘い混むようなやつばっかだし、ネットも当てにならないな。

ピロンッ

『今どこ?』

『車。でももう着いたよ』

『そか、じゃあ浜で待ってるな』

 車が止まったのを確認し、携帯の画面を切る。そして10年ぶりの土地へと足を付けた。

「やっと着いた~!」

 この海に面した町の名前はディーリッヒ。自然に囲まれているが、活発で田舎の中の都市みたいな所だ。

 海に面しているところは全て砂浜。彼女との約束の場所は一本だけ木の生えた所。

「ミア~!」

 木の下に人影を見つけた私は大きな声でミアの名前を叫び、走って近づく。

「お、もしかしてサラか?」

「フルネームは?」

「サラヴィナ・ウィッチだろ?ほら私のは?」

「ミア・ブラッディ・ウィル」

「サラ!」

「ミア!」

 10年ぶりの再会。私たちはあの日と同じ朝焼けの空の下、抱き合った。

 ミアの髪の毛はいつの間にか紫色に変色。チョーカーやピアス、二つのベルトなどたくさんの物が彼女の体に張り付いている。よく見ると右肩には蝶の入れ墨。

「グレたの?」

「ちげぇよ。ただ自由にやりたいことやってるだけ」

「学校は?」

「リープタイ大学」

「はぁ!?」

 リープタイ大学はこの町で唯一の大学だ。唯一にしてこの国では3番目の学力を持つ大学。こんな不良みたいなミアが入れるような学校じゃない。

「裏口?」

「入試受けたっての」

「在学の証明は??」

「ほら学生証」

 ミアは財布から一枚のカードを取り出し、私に手渡す。

【Leaptie University No.437995

 Name:Mia・Bloody・Will】

そこには本当に彼女の名前が書かれていた。

「いやいや、おかしいって」

「残念これが現実だ。というか昔っから私の方が頭良かったろ」

「ソーダッケー」

 そう、ミアの言うとおり彼女は昔から頭が良く、小学校のテストでもいつも満点を取っているようなThe優等生みたいな奴だった。口調以外は。しかも憎いことに運動まで完璧にできやがる。それに比べて自分はいつも30点以下の落ちこぼれ。クラスのみんなに馬鹿にされながら一応頑張って勉強してたんだけどね。

 でも私、戻ってくる前は栄養士学校に通ってたから今ではそこそこできる方だ。

「そういや山の中に作った秘密基地はどうなったんだろな?」

「あはは!あったあったそういうの。確かジェシが転んで木で作った秘密基地は壊れたんじゃなかった?」

「そういやそうだった、ははは」

 そこからは2人の昔話だ。10年以上も前、3人でよく集まっていた頃の出来事を思い出しながらそのことについて語り合う。

 学校での出来事や休みの日に遊びに行った時のこと、海で溺れかけた時のことなど思い出は次々と口から溢れ出る。2人はまるで栓の壊れた蛇口のようで、何個言ってもその勢いは止まらない。そのくらい私とミア、ジェシには思い出が多すぎる。

 悲しいことやつらいこともあったけど10年以上も経てばそれも良い思い出になる。

 そういや連絡先は知らなかったから呼べなかったけどジェシはどうしてるんだろう。

「ねえミア」

「なんだ?」

「ジェシは?」

「――ッ」

「ん?」

「ああ、元気だよ」

「早く会いたいな~!」

「……」




























 揺れる車の中、ふと10年前のことを思い出す。懐かしい記憶、悲しくさみしい記憶。あの別れ際の言葉は頭の中で鮮明に再生された。

 次に頭は再会の言葉を考え始める。

「やあミア、ジェシ。また会えたね?」

これはなんか鬱陶しい。

「ミア!ジェシ!ひっさしぶり!!」

元気すぎるのもアレか……。

 こういうときの適切な言い方はどう言うのだろう。スマホで『久々の再会 適切な言葉』を検索してみる。

 うん、変なサイトへの誘導ばっか。しかも出会い系に誘い混むようなやつばっかだし、ネットも当てにならないな。

ピロンッ

『今どこだ?』

『車。でももう着いたよ』

『そうか、じゃあ浜で待ってるから』

 車が止まったのを確認し、携帯の画面を切る。そして10年ぶりの土地へと足を付けた。

「やっと着いた~!」

 この海に面した町の名前はディーリッヒ。自然に囲まれているが、活発で田舎の中の都市みたいな所だ。

 海に面しているところは全て砂浜。彼女との約束の場所は一本だけ木の生えた所。

「ミア~!」

 木の下に人影を見つけた私は大きな声でミアの名前を叫び、走って近づく。

「お、サラ!」

「フルネームは?」

「サラヴィナ・ウィッチだろ?」

「ミア~!」

 10年ぶりの再会。私たちはあの日と同じ朝焼けの空の下、抱き合った。

 ミアの髪の毛はいつの間にか紫色に変色。チョーカーやピアス、二つのベルトなどたくさんの物が彼女の体に張り付いている。よく見ると右肩には蝶の入れ墨。

「グレたの?」

「いやいや、見た目でグレたって決めつけないでくれよ。ただ自由にやりたいことやってるだけ」

「学校は?」

「リープタイ大学」

「はぁ!?」

 リープタイ大学はこの町で唯一の大学だ。唯一にしてこの国では3番目の学力を持つ大学。こんな不良みたいなミアが入れるような学校じゃない。

「裏口?」

「入試受けたっつーの」

「在学の証明は??」

「ほら学生証だ」

 ミアは財布から一枚のカードを取り出し、私に手渡す。

【Leaptie University No.437995

 Name:Mia・Bloody・Will】

そこには本当に彼女の名前が書かれていた。

「いやいや、おかしいって」

「昔っから私の方が頭良かったろ?」

「ソーダッケー」

 そう、ミアの言うとおり彼女は昔から頭が良く、小学校のテストでもいつも満点を取っているようなThe優等生みたいな奴だった。口調以外は。しかも憎いことに運動まで完璧にできやがる。それに比べて自分はいつも30点以下の落ちこぼれ。クラスのみんなに馬鹿にされながら一応頑張って勉強してたんだけどね。

 でも私、戻ってくる前は栄養士学校に通ってたから今ではそこそこできる方だ。

「そういや山の中に作った秘密基地はどうなったんだろな?」

「あはは!あったあったそういうの。確かジェシが転んで木で作った秘密基地は壊れたんじゃなかった?」

「そういやそうだったな」

 そこからは2人の昔話だ。10年以上も前、3人でよく集まっていた頃の出来事を思い出しながらそのことについて語り合う。

 学校での出来事や休みの日に遊びに行った時のこと、海で溺れかけた時のことなど思い出は次々と口から溢れ出る。2人はまるで栓の壊れた蛇口のようで、何個言ってもその勢いは止まらない。そのくらい私とミア、ジェシには思い出が多すぎる。

 悲しいことやつらいこともあったけど10年以上も経てばそれも良い思い出になる。

 そういや連絡先は知らなかったから呼べなかったけどジェシはどうしてるんだろう。

「ねえミア」

「なんだ?」

「ジェシは?」

「   」




 時間が止まるような感覚がした。

 それはミアの口からあり得ないようなことが聞こえてきたから。

「嘘、でしょ?」

「嘘はさっき。これは本当だ」

 ミアがよく分からないようなことを言う。

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘嘘嘘、絶対どこかに隠れているんだ。私を脅かそうとしてるんだ。

 はは。

 そんな嘘つくなんて2人とも人が悪いなあ……。

「あはは、どこに居るのジェシ」

「だから!サラの知るジェシカ・ビーフィルドは死んだ!」

「……」




























  揺れる車の中、ふと10年前のことを思い出す。懐かしい記憶、悲しくさみしい記憶。あの別れ際の言葉は頭の中で鮮明に再生された。

 次に頭は再会の言葉を考え始める。

「やあミア、ジェシ。また会えたね?」

これはなんか鬱陶しい。

「ミア!ジェシ!ひっさしぶり!!」

元気すぎるのもアレか……。

 こういうときの適切な言い方はどう言うのだろう。スマホで『久々の再会 適切な言葉』を検索してみる。

 うん、変なサイトへの誘導ばっか。しかも出会い系に誘い混むようなやつばっかだし、ネットも当てにならないな。

ピロンッ

『もう着く頃か』

『いや、もう着いたよ』

『そうか、じゃあ待ってる』

 車が止まったのを確認し、携帯の画面を切る。そして10年ぶりの土地へと足を付けた。

「やっと着いた~!」

 この海に面した町の名前はディーリッヒ。自然に囲まれているが、活発で田舎の中の都市みたいな所だ。

 海に面しているところは全て砂浜。彼女との約束の場所は一本だけ木の生えた所。

「ミア~!」

 木の下に人影を見つけた私は大きな声でミアの名前を叫び、走って近づく。

「サラ……」

「フルネームは?」

「サラヴィナ・ウィッチ」

「ミア~!」

 10年ぶりの再会。私たちはあの日と同じ朝焼けの空の下、抱き合った。

 ミアの髪の毛はいつの間にか紫色に変色。チョーカーやピアス、二つのベルトなどたくさんの物が彼女の体に張り付いている。よく見ると右肩には蝶の入れ墨。

「グレたの?」

「グレてないから」

「学校は?」

「リープタイ大学」

「はぁ!?」

 リープタイ大学はこの町で唯一の大学だ。唯一にしてこの国では3番目の学力を持つ大学。こんな不良みたいなミアが入れるような学校じゃない。

「裏口?」

「入試受けたよ」

「在学の証明は??」

「ほら学生証」

 ミアは財布から一枚のカードを取り出し、私に手渡す。

【Leaptie University No.437995

 Name:Mia・Bloody・Will】

そこには本当に彼女の名前が書かれていた。

「いやいや、おかしいって」

「昔っから私の方が頭良かったろ?」

「ソーダッケー」

 そう、ミアの言うとおり彼女は昔から頭が良く、小学校のテストでもいつも満点を取っているようなThe優等生みたいな奴だった。口調以外は。しかも憎いことに運動まで完璧にできやがる。それに比べて自分はいつも30点以下の落ちこぼれ。クラスのみんなに馬鹿にされながら一応頑張って勉強してたんだけどね。

 でも私、戻ってくる前は栄養士学校に通ってたから今ではそこそこできる方だ。

「そういや昔、勝手に人の家に入って植木に実ってたトマト食べて怒られたよな」

「あはは!あったあったそういうの。確かジェシが『あ!トマトだ!ねえねえ、内緒で食べない?』とかいって家に入ってったんだよね」

「そうそう、それで真っ先に『おいしー!』って大声で言って見つかった」

「アレは馬鹿だったよね~!」

「逃げるタイミングでもう一個とかいって食べてた馬鹿もいたけどな」

「あはは……」

 そこからは2人の昔話だ。10年以上も前、3人でよく集まっていた頃の出来事を思い出しながらそのことについて語り合う。

 学校での出来事や休みの日に遊びに行った時のこと、海で溺れかけた時のことなど思い出は次々と口から溢れ出る。2人はまるで栓の壊れた蛇口のようで、何個言ってもその勢いは止まらない。そのくらい私とミア、ジェシには思い出が多すぎる。

 悲しいことやつらいこともあったけど10年以上も経てばそれも良い思い出になる。

 そういや連絡先は知らなかったから呼べなかったけどジェシはどうしてるんだろう。

「ねえミア」

「なんだ?」

「ジェシは?」

「落ち着いて聞いてくれ……ジェシは一年前、自分の家で自殺した」




 時間が止まるような感覚がした。

 それはミアの口からあり得ないようなことが聞こえてきたから。

「嘘、でしょ?」

「本当だ」

 ミアがよく分からないようなことを言う。

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘嘘嘘、絶対どこかに隠れているんだ。私を脅かそうとしてるんだ。

 はは。

 そんな嘘つくなんて2人とも人が悪いなあ……。

「ジェシ?どこに居るの?」

「落ち着けって!!でもおかしいんだよ!自殺な訳がない!」

「え……」

 私はミアの唐突な怒鳴り声で我に返る。

「本当にジェシは自殺したんだ。でも考えてみろ、あいつが自殺するなんておかしいだろ?」

「あの子が自殺するなんてあり得ない……」

「そうだ、あり得ない。不思議すぎやしないか?」

 そう、おかしいんだ。私が知っているのは10年前までのジェシだが、ミアの話ではジェシの性格などは一切変わって無かった。みんなに好かれ、愛されていたジェシは自殺とはほど遠い人物だった。

「不思議……」

「私はジェシの死には何かあると思う、こっちの町に戻ってきて早々申し訳ないんだけど私に協力してくれ」

「協力?」

「ああ、ジェシの死。本当の理由を知りたい」

 こうやって話しているとミアの真剣さに押される。そして本当にこう感じてくる。『ジェシカ・ビーフィルドは死んだ』と。

「……私も、知りたい。協力する」

「本当か!?」

「ええ、だってやっぱりジェシは自殺するような子じゃない。たとえ自殺だとしてもその理由には何かあるはずだから」

「ありがとう、サラ」

「ううん。ジェシのもやらないといけないけどさ、今日は大学内案内してくれない?」

「え?ああ、いいよ」

 ミアは少し困ったような顔で返事をする。もしかして本当はリープタイ大学ではないのかな?それとも今の姿を見る限り停学中とか?ミアなら暴力事件起こしてても問題ないしありそう。

「ほら、行くぞ」

「え!?今から??」

「もちろん、もう8時。もう大学は開いてるからな。そこで待っとけ」

 ミアに言われたとおり、この場所で待つ。待ってる間、ジェシのことを考えてしまう。やっぱり本当にジェシが死んだのか、ドッキリなのか。もし本当に死んでたとしたらそれは私の半身を失ったような感覚だ。

 小さい頃からの親友、私の命より大事な親友。

(絶対、理由を見つけてやる)

 私は心の中で決意する。

 そうこうしている内にサラは私の居る場所にバイクで帰ってくる。

「サラ、これ被って後ろに乗れ」

渡されたヘルメットを被りミアの後ろに座ると、バイクは急発進した。

 

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