戦闘実験参加の経緯(「ヒーロー」達)

覚醒せし三騎士

 快晴のヴァレンティア城庭園にて。

「よし、今日のメニュー終わり!」

 ヴァレンティア王国の騎士、須王すおう龍野りゅうやは、日課のトレーニングをこなし終えていた。

 水分補給を終え、城に戻ろうとすると、簡易的なドレスを纏った少女が歩いてきた。

「ん、ヴァイスか。どうした?」

「お疲れ様、龍野君。ちょっとだけ、ついてきてくれるかしら?」

「ああ」

 ヴァイス――ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア姫殿下――は、龍野のあるじとしてはやや相応しくない態度友人に依頼をする口調を取った。

 しかし龍野は黙って、ヴァイスの後をついていった。



「着いたわ」

 エレベーターを経由して地下に向かった二人。


 そこには、全高17.6mの漆黒のロボットが直立不動で待機していた。


「こいつは……? ってこの外見、俺の鎧騎士状態の姿じゃねえか!」

「この機体はね、『シュヴァルツリッター』と言うわ。そしてそれだけじゃないのよ、龍野君」

 ヴァイスが端末を操作する。

 シャッターが開き、純白のロボットが姿を現した。一方は全高17m、もう一方は全高16.8m。頭部の王冠状の飾りも、若干違っている(全高17mのがわは正面の一本がV字状のアンテナだが、全高16.8mのがわはブレード状である)。

「おおう、お前の鎧騎士状態の姿そのまんまじゃねえかヴァイス! って、どうして2機いるんだ?」

「それはこういうことよ。シュシュ!」

「はい、お姉様!」

 物陰から姿を現した、“シュシュ”と呼ばれた――正式な名前は、“シュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティア”という――少女は、ツインテールを躍らせながら二人に近づいた。

兄卑あにひ(龍野のこと)、不本意ながら共に戦わせてもらうわよ! お姉様より授けられた、この『ヴァイスリッター・ツヴァイ』でね!」

 全高16.8mの機体を手のひらで指し示しながら、乏しい胸を張って伝えるシュシュ。

「ちなみに、私の機体は『ヴァイスリッター・アイン』と言うわ」

「あいよ、ヴァイス。それよりも、シュシュ。お前、『不本意ながら』と言う割には嬉しそうだな……」

「それは当然よ! お姉様よりの依頼ですもの!」

 やはり乏しい胸を張って、嬉々として言い切るシュシュ。

「そうかよ。ところで、ヴァイス」

「何かしら?」

「この3機、どうやって作った?」

「ああ、それはね。『先の事件』で共闘してもらった、あの異世界からの戦士と姫様からの技術提供、と言ったところかしらね」

「おう、わかった。“あいつら”か……」

 龍野は脳裏に、ある人物達の顔を浮かべた。

「あいよ、もういい。ありがとよ。それで、こいつらはどうやって操縦するんだ?」

「そうね、乗りなさい――ッ!」

 突如として、警報が鳴り響いた。

「戦いながら教えるわ! 今は出撃して!」

「あいよ!」


 黒騎士シュヴァルツリッターと2機――いや、姉妹アインとツヴァイ機である白騎士ヴァイスリッター達が、バイザーを点灯させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る