剥き女
六地蔵
剥き女
夜、都内の私鉄に、出る。
Aさんは、仕事終わりにその私鉄でつり革を掴み、立った。
前の座席には、オレンジ色のワンピースを着た細身の女性が座っている。その色は鮮やかで、目に痛いほどだ。つば広の日除け帽を被っているため、顔は見えなかった。
そのまま、特急で二駅。車窓からぼんやりと夜の街を眺めた。ふと視線を下げると、目の前の座席に腰かけた女性の口元が見えた。
黄色い、歯石だらけの歯を剥いて、おそらく笑っていた。帽子のつばに遮られて見えなかったが、目がこちらを凝視していることを感じた。よく見ると手足はガリガリに痩せており、まるで骨にそのまま皮が被さっているようだ。気味が悪かった。
幸いすぐに降車駅に着いたので、電車を降りた。そのとき、背中に重みを感じた。直後に肩に鋭い痛み。
振り向くと、オレンジ色のワンピースが目に入った。続いて肩に食い込む女の歯。あの、歯石だらけの黄色い歯だ。
痛みや恐怖よりも嫌悪感が勝った。悲鳴をあげ、逃れようとするが、パニックになり躓き、倒れ込んでしまった。
幸い、周囲の人が女を引き剥がしてくれた。女はそのままどこかに消えた。
そのときのことを思い出すと、いまだに吐き気を催すと、Aさんは言う。それほどに嫌悪感が強かったそうだ。
剥き女 六地蔵 @goyaningen
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