かてー部にっし!!

木目 ⑦日

かっ、かてー部に依頼!?

とある町のとある家に一人暮らしする高校生。程よく勉学に励み、友人は作らず、されど全国で五本の指に入る程の学力を保持している。大抵クラスメイトに嫉妬や敬遠されるであろう。


それが氷鳥凜である。




四月某日月曜日、桜の咲き乱れる少し前




人は環境が変わっても、一ヶ月もしないうちに慣れてしまう。それは、両親と死別して一年も経ってしまった凜も、部員が一人しかいないこの かてー部 も、同じである。




家庭料理研究部かてー部


去年まで部員がいなくなっていて廃部寸前だったこの部に部員がいないという理由ワケで入部したのが俺である。


部員が一人しかいない、さらに奇妙な名前の部であるため、ほとんど存在を知られていない。




かてー部 のことを思い浮かべたからか、今日は部活を行うつもりはなかったが、なんとなく部室に行くことにした。まあすることがなければ、今読みかけの本でも読めばいいだろう…。




とりあえず、部室の鍵を借りるべく職員室に向かったが、いざ借りようとしたら、


『貸出中』


となっていた。第八調理室なんぞ授業でも使われていなないのに。 かてー部 以外に用がある生徒などいるのだろうか。何か嫌な予感がした。まあ気のせいだろう。


とはいっても、疑問は疑問である。何か かてー部 に用があるならメモを張り付けておいて欲しかったが。最も入部だけはやめてほしいと思う。




この学校もさすが私立というだけに八階まである。一階の職員室から、最上階にある部室までの移動は大変だ。理事長、至急エレベーターの設置を。




第八調理室には既に灯りが点いていた。一応中に人がいるのでノックをした。


調理室に入ると調理テーブルに三人の女生徒が並んで座っていた。なんと言ったものか迷っていると、一番左のショートボブの子がお辞儀をして話しかけてきた。




「こんにちは。お邪魔しています。」




「ええと、 かてー部 です。何か用がおありですか?」


正直なところ、面倒だったので用件を早く済ませたかった。


彼女の方もそれを察したのか、単刀直入に言おうとしてきたみたいだった。




しかしそれは…






「ええと、単刀直入に言うと…」








それは…








「付き合って下さい!!」








それは余りにも単刀直入すぎだった。

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