乾燥

春嵐

世界の終焉という荒野

 荒野に立つ自分。

 夢か。

 ちょっとした頭痛。

「ああ、そっか」

 現実だった。

 私の頭痛は、ここでしか起こらない。

「世界が終わったんだな」

 世界が終わる。

 私が生まれた第五空間。その中で、ひとつの試合が終わることを、世界の終わりと呼称する。そして、いま、試合が終わって、現実の荒野にひとり立つ自分。

 もともと、私に、実体はなかった。第五空間の中で生まれた自分には、現実というものがよくわからなかった。

 多くの参加者にとって、それは遊びでしかない。そして、それだけが私にとっての現実だった。

 世界とは、終わるもの。

 ヒトにとっての夢は、私にとっての現実。

 私にとって現実は、夢を指すものだった。

 そしていま、現実にいる。

 私に身体を与えた者が、とりあえず世界を見て回ってみてはどうかと提案した。それで、荒野にいる。

『どう?』

 私に身体を与えた者。通信が入る。

「乾燥してますね。水が飲みたいです」

『あ、待っててね、今、空輸で』

「要りません」

『え?』

「自分で水を探索してみます」

『だって、しんじゃうよぉ』

 じゃあなぜ荒野なのか。

 いや。

 荒野に来たのは私だった。どうやら乾燥すると思考も鈍るらしい。

「とりあえず、倒れるまで動くので、倒れたら空から水を掛けてください」

『うん。むりしないでね』

 優しいかよ。

「さて」

 水を探そう。

 よくわからないが、ちょっと、わくわくする。

 これが、現実か。

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乾燥 春嵐 @aiot3110

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